雑談ぞうだん)” の例文
旧字:雜談
お帰りのあとはいつも火のきえたようですが、この時の事は、村のものの一年中の話の種になって、あの時はドウであった、コウであったのと雑談ぞうだんが、始終尽ない位でした。
忘れ形見 (新字新仮名) / 若松賤子(著)
此の頃の雑談ぞうだんを書記したたぐい書籍しょじゃくにも、我が知れる限りでは右衛門為基の恋愛だんは見当らず、又果して恋物語などが有ったのか否かも不明であるが、為基と右衛門との間に
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
勘左衛門の三人が三鉄輪みつがなわに座を構えて、浮世雑談ぞうだんの序を開くと、その向うでは類は友の中間ちゅうげん同志が一塊ひとかたまりとなッて話を始めた,そこで自分は少し離れて、女中連の中へはいり込み
初恋 (新字新仮名) / 矢崎嵯峨の舎(著)
笑う者もあれば雑談ぞうだんを云う者もあるその中で、お嫁さんばかりひとしずかにしてお行儀をつくろい、人に笑われぬようにしようとしてかえってマゴツイて顔を赤くするその苦しさはこんなものであろうと
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
立って歩行あるく、雑談ぞうだんは始まる、茶をくれい、と呼ぶもあれば、鰻飯うなぎめしあつらえたにこの弁当は違う、とわめく。下足の札をカチカチたたく。中には、前番まえのお能のロンギを、野声を放って習うもござる。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
家内中寄集よりこぞりて、口をほどいて面白そうに雑談ぞうだんなどしている時でも、皆云い合したように、ふと口をつぐんで顔を曇らせる、といううちにも取分けてお政は不機嫌ふきげんていで、少し文三の出ようが遅ければ
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
御本尊様の前の朝暮ちょうぼ看経かんきんには草臥くたびれかこたれながら、大黒だいこくそばに下らぬ雑談ぞうだんには夜のふくるをもいとい玉わざるにても知るべしと、評せしは両親を寺参りさせおき、鬼の留守に洗濯する命じゃ
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)