降籠ふりこ)” の例文
小県凡杯は、はじめて旅をした松島で、着いた晩と、あくる日を降籠ふりこめられた。景色は雨にうずもれて、かまどにくべた生薪なままきのいぶったような心地がする。
灯明之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
駈込かけこんで、一呼吸ひといきいた頃から、降籠ふりこめられた出前でさきの雨の心細さに、親類か、友達か、浅草辺に番傘一本、と思うと共に、ついそこに、目の前に、路地の出窓から、果敢はかない顔を出して格子にすがって
第二菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
老人らうじんくちをあいてわらひ、いやめづらしくもない、まゝあること、にはかゆき降籠ふりこめられると、ともはなれ、ねぐらまよひ、行方ゆくへうしなひ、じきゑて、かへつてひとなづる、これは獵師れふしあはれんで、生命いのちらず、ひえ
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)