長良ながら)” の例文
あきづけば、をばなが上に、おく露の、けぬべくもわは、おもほゆるかもと長良ながら乙女おとめの歌を、繰り返し繰り返すように思われる。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
瑞龍寺を出て、権現山ごんげんやますそを北へ添って行くと岐阜城、その途中を左へ折れて、町中まちなかの道を真直ぐに進むと長良ながら川の岸へ出る。
蒲生鶴千代 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
すぐ彼方かなた加納かのうの渡しを越えると、わずか一里にして北方郷となり、彼女のふるさとの小野の里は長良ながら街道の山ぞいにあった。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
才気も縦横で、伝説の長良ながらの乙女のように二人の男に思われれば「淵川へ身を投げるなんてつまらないじゃありませんか」
婦人と文学 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
逢坂、長良ながらを後ろにして、宇治、東山を前にした山科谷。しばらくすると米友が、はったと足の歩みをとどめて
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
美濃の都は岐阜ぎふであります。鵜飼うかいで有名な長良ながら川のほとりに在る町であります。この都の名にちなんだものでは、誰も岐阜提灯ぎふぢょうちんのことが想い浮ぶでありましょう。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
大饗おほみうけの引出物に白馬あをうまばかりを三十頭、賜つたこともございますし、長良ながらの橋の橋柱はしばしらに御寵愛のわらべを立てた事もございますし、それから又華陀の術を傳へた震旦しんたんの僧に
地獄変 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
何でも之は出来ない相談をして足留あしどめ工風くふうをするにかずとお考へ遊ばして、無暗に呉れるが道楽の若殿だから一つ無心をしてやらうと思召し、今更に長良ながらの橋の鉋屑かんなくづ
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
こゝで此の二人が噂をしている「そちの大納言」とその北の方と云うのは如何いかなる人であるか、と云うのに、大納言は藤原国経くにつねのことで、閑院左大臣冬嗣ふゆつぐの孫に当り、権中納言長良ながら嫡男ちゃくなんである。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
稲葉山の城下は——長良ながらの水も、町屋の辻も、すぐ眼の下だった。けれど人影といったらまったく人ッ子ひとり見えなかった。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
長良ながら乙女おとめが振袖を着て、青馬あおに乗って、峠を越すと、いきなり、ささだ男と、ささべ男が飛び出して両方から引っ張る。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
大饗おほみうけの引出物に白馬あをうまばかりを三十頭、たまはつたこともございますし、長良ながらの橋の橋柱はしばしらに御寵愛のわらべを立てた事もございますし、それから又華陀くわだの術を伝へた震旦しんたんの僧に
地獄変 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
夜空をこがす松明たいまつやかがりは、遠く長良ながらの大河をよぎり、なお第三、第四の後続部隊が、この平原も狭しとまで、夜どおし東へ東へと流れつづくかに見えた。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「これから五丁東へくだると、道端みちばた五輪塔ごりんのとうが御座んす。ついでに長良ながら乙女おとめの墓を見て御行きなされ」
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「すぐそこは、長良ながらの川原じゃねえか。稲葉山が見えてらあ」
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)