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鐚銭
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びたせん
ふりがな文庫
“
鐚銭
(
びたせん
)” の例文
旧字:
鐚錢
母屋
(
おもや
)
は、幾度も幾度も、床下も、天井裏も、下水の中も、ゴミ箱も見ました。が、五千両は愚か、
鐚銭
(
びたせん
)
一枚その辺りには見付かりません。
銭形平次捕物控:055 路地の小判
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
女史は毎週、土曜日の
午後
(
ひるすぎ
)
、
定
(
きま
)
つたやうに鎌倉の別荘へ出掛けるが、そんな折にも
鐚銭
(
びたせん
)
一つ持合さないのが何よりの自慢らしい。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
いつか、月ノ宮の
鳥居
(
とりい
)
の下で見たこともあるが、
蛾次郎
(
がじろう
)
は、ただの
物貰
(
ものもら
)
いとしか思わないので、いまの餅屋のおつりのうちから
鐚銭
(
びたせん
)
を一枚なげて
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
亭主が何しろ半兵衛で
鐚銭
(
びたせん
)
一文持たないごろつきであるから、入院などとても
覚束
(
おぼつか
)
ない、助けると思ってここに治るまで寝かせてくれとすがり附いて頼んだ。
光の中に
(新字新仮名)
/
金史良
(著)
この騒ぎのもとはなにかというと
鐚銭
(
びたせん
)
十文ですむところを、錠銀一個を投じたためであった。
呂宋の壺
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
▼ もっと見る
鐚銭
(
びたせん
)
に至るまで、あらゆる種類が網羅されてあり、それを山に積んで、右から左へ種類分けにして、奉書の紙へ包んでみたり、ほごしてみたり、
叺
(
かます
)
へ納めてみたり、出してみたりしている。
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「死にゃお前結構やが、運の悪い時ゃ悪いもんで、傷ひとつしやへんのや。親方に金出さそうと思うたかて、勝手の病気やぬかしてさ。
鐚銭
(
びたせん
)
一文出しやがらんでお前、代りに暇出しやがって。」
南北
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
「まア、ちょいと、大の男がこんな財布を持って歩くの。良い胆っ玉ね、
鐚銭
(
びたせん
)
まで入れて六十四文、ホ、ホ、ホ、ホ、だから八さんは可愛いのさ」
銭形平次捕物控:034 謎の鍵穴
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
代官所の
認可
(
ゆるし
)
を得て、村では、それから間もなく七十余両の
鐚銭
(
びたせん
)
で街道安全の
橋普請
(
はしぶしん
)
に取りかかった。
下頭橋由来
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
女房
(
かない
)
は世間並に一人あるが、
醜婦
(
すべた
)
で
稼
(
かせ
)
ぎ
人
(
にん
)
で、
加之
(
おまけ
)
に子供を生む事を知らないので、金は溜る一方であつたが、夫婦とも揃ひも揃つた
吝嗇坊
(
しわんばう
)
で、寄附事といつたら
鐚銭
(
びたせん
)
一つでも出し惜みをした。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
畢生
(
ひっせい
)
の大傑作「冬の旅」二十四曲は、一曲わずかに一フロリンずつで買われた。珠玉を
鐚銭
(
びたせん
)
に代える如きものであるが、出版屋はそれをさえ恩に着せた。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
「だってそうじゃないか、考えてもご覧なさいよ。江戸へ行くまでには、まだ何百里っていう道のりだよ、大津くんだりで、
鐚銭
(
びたせん
)
もなくなっちゃッてどうするのさ」
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「青銭や
鐚銭
(
びたせん
)
を小粒に変えたのも、みんな秀の野郎の細工さ。秀はあの屋敷の中の様子が知りたかったんだ」
銭形平次捕物控:009 人肌地蔵
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「いったい、どこが金まわりがいいんでしょうな。紙のかねでも、値が下がった
鐚銭
(
びたせん
)
でも、うんと出廻っていればまた、うんとふところのいいやつが出来るにちがいないが」
私本太平記:09 建武らくがき帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「小判はおろか
鐚銭
(
びたせん
)
一枚入った財布を持っちゃいない。照吉の方は財布は持っているが一文なしだ」
銭形平次捕物控:112 狐の嫁入
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
と、よく合羽の袖から、
鐚銭
(
びたせん
)
が投げられた。
下頭橋由来
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
襲撃の寸前、間髪を容れず、
鐚銭
(
びたせん
)
が一枚飛んで来て、曲者の
鬢
(
びん
)
のあたりを
強
(
したた
)
かに打ったのです。
銭形平次捕物控:115 二階の娘
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「何を言やがる。同じ細工をするなら、手頃な瓶に
鐚銭
(
びたせん
)
でも詰めてよ、都合のいいように遺言状でも
拵
(
こしら
)
えて、埋めて置きゃアいいじゃないか。猫の子ほどの智恵もねえ人足どもだ」
銭形平次捕物控:038 一枚の文銭
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「あの地蔵様に上げた青銭や
鐚銭
(
びたせん
)
が、ピカピカする一分金や板銀に変るとよ」
銭形平次捕物控:009 人肌地蔵
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
入口の方へは何千貫とも知れぬ青銭と
鐚銭
(
びたせん
)
とを入れておくとか、土蔵三戸前の腰張りの内側は、ことごとく金蔵になっていて、何万両とも知れぬ大判小判が入っていると言われておりますが
銭形平次捕物控:110 十万両の行方
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
疑いもなく元のままの
真物
(
ほんもの
)
で、
贋物
(
にせもの
)
と摺り替えた形跡は少しもなく、あんなに骨を折って盗った癖に、
鐚銭
(
びたせん
)
一枚身に着けないのですから、この泥捧の目的ばかりは全く見当も付かないのでした。
銭形平次捕物控:003 大盗懺悔
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
“鐚銭”の意味
《名詞》
金属の質が悪く価値が低い粗悪な銭。鐚。
(出典:Wiktionary)
“鐚銭”の解説
鐚銭(びたせん、びたぜに)とは、日本の室町時代中期から江戸時代初期にかけて私鋳された、永楽銭を除く粗悪な銭貨。表面が磨滅した粗悪な銭を指す言葉でもある。悪銭(あくせん)とも。ほんのわずかのお金を意味する「びた一文」の「びた」はこれに由来する。
(出典:Wikipedia)
鐚
漢検1級
部首:⾦
20画
銭
常用漢字
小6
部首:⾦
14画
“鐚”で始まる語句
鐚
鐚一文
鐚錢
鐚助
鐚儀
鐚公
鐚文
鐚一銭