鏘々しょうしょう)” の例文
鏘々しょうしょう甲冑かっちゅうのひびきが聞える。明らかに簇々ぞくぞくと兵団の近づくような地鳴りがする。すわと、にわかに信玄のまわりは色めきたった。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
時に鏘々しょうしょうとして響くのはこの音で、女神がくしけずると、またあらためて、人に聞いた——それに、この像には、起居たちいがある。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
たちまち脚下の満城の地には、草摺くさずりのひびきや馬蹄の音が鏘々しょうしょうと、戛々かつかつと、眼をさましたなみのように流れ出すのが聞えてきた。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
耳鉗みみわ腕釧うでわも細い姿に、抜出ぬけでるらしく鏘々しょうしょうとして……あの、さら/\と歩行あるく。
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
久しくこの古城に聞かなかったよろいや具足の音が、鏘々しょうしょうと打揃って、陣列をなし、旗さし物や槍の光や馬のいななきと共に、美濃の戦場へ立って行った。
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が、如何せん、越前の山野は、鬼将軍の夜も鏘々しょうしょうと鳴る心事に反し、十月末はもう白皚々はくがいがいの雪、意はうごかし得るも、軍はうごかすよしもない。折から
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あぶみ、口輪、よろいの草ずり、太刀のおとなど、鏘々しょうしょうと鳴ってゆくがごとき武者群の疾駆のなかで、高らかに、こんな思い出を、語りあって行く声もする。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
楼台を降った曹操は、冷泉にうがいし、衣服をかえ、帯剣を鏘々しょうしょうと鳴らしながら、石廊を大歩して行った。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「われこそ」と、刀を舞わして、張虎へ当り、戦うこと三十余合、火華は鏘々しょうしょうと、両雄の眸をいた。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
閃々、たがいに白虹はっこうを描き、鏘々しょうしょう、共につばおののき鳴らす。——そして魏延の足が劉璋へ近づこうとすれば張任の眼と剣は、きっと、玄徳へ向って、殺気をはしらせた。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鏘々しょうしょうと揺れ響く馬具甲冑の激流のなかで、人々は声をもって、また鞭をもって、励まし合った。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と呂布はまだ嘲笑あざわらう余裕さえあった。関羽、張飛、玄徳の三名を物ともせず、右に当り左にぎ、閃々せんせんの光、鏘々しょうしょうの響き、十州の戦野の耳目は、今やここに集められたの観があった。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
火華をちらし、槍を砕き、またほこをかえて、鏘々しょうしょう戛々かつかつ、斬り結ぶこと実に百余合。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
駆けちがう万騎のひづめ弩弓どきゅうのうなり、鉄箭てっせんのさけび、戛々かつかつと鳴るほこ鏘々しょうしょう火を降らしあう剣また剣、槍はくだけ、旗は裂け、人畜一つおめきの中に、屍は山をなし、血は雪を割って河となした。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
白光はっこうを噴いた双龍そうりゅうにも似る二人のあいだに、鏘々しょうしょうとして、火花が散った。しかし彼の長剣も、林冲の長巻も、幾十ごうとなくその秘術を尽しあったが、どっちも、相手の一髪すら斬ってはいない。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また八旗の旗本、鏘々しょうしょうとくつわを並べて駈け進んでくる。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)