鍵形かぎなり)” の例文
左手ゆんでひじ鍵形かぎなりに曲げて、と目よりも高く差上さしあげた、たなそこに、細長い、青い、小さなびんあり、捧げて、俯向うつむいて、ひたい押当おしあ
処方秘箋 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
西洋式の庭は海に面して広く、一面に青芝が生へ、鍵形かぎなりになつた石の胸壁の正面には石段があり、桟橋があり、下には一艘の短艇ボートが波にゆられてゐた。
雲母集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
城内はキリスト教青年会が排日の宣伝をしてゐるので、私達は万一の危険を警戒して、東門から北門への大通を鍵形かぎなりに早足で通過するに止めた。金州と同じく表通は商家と飲食店が賑はつてゐる。
無意識に今つかんだのは、ちょうど折曲げた真白まっしろひじの、鍵形かぎなりに曲った処だったので
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
真黒まっくろな円い天窓あたま露出むきだしでな、耳元を離した処へ、その赤合羽の袖を鯱子張しゃちこばらせる形に、おおきひじを、ト鍵形かぎなりに曲げて、柄の短い赤い旗を飜々ひらひらと見せて、しゃんと構えて、ずんずん通る。……
朱日記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
い心持に眠気がさすと、邪魔なあかりひじにかけて、腕を鍵形かぎなりに両手を組み、ハテ怪しやな、おのれ人魂ひとだまか、金精かねだまか、正体をあらわせろ! とトロンコの据眼すえまなこで、提灯を下目ににらむ、とぐたりとなった
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)