鈍刀なまくら)” の例文
「よしっ、買ッた。そう見くびられちゃあ、こッちも意地だ。買わずにゃおかねえ。だがよ、おい。まさか鈍刀なまくらじゃアあるめえな」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鋭い爪で茨掻ばらがきに引っ掻きまわしたのか、あるいは鈍刀なまくらの小さい刃物で滅多やたらに突き斬ったのか、その辺はよく判らないとのことであった。
半七捕物帳:10 広重と河獺 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
外のものは畳と云はず、襖と云はず、障子と云はず、鈍刀なまくらで、滅多切りに切り散らして居る。群衆の中には、こんなことを云うて居るものがある。
ダンスに夢中になってる善男善女が刃引はびき鈍刀なまくらおどかされて、ホテルのダンス場は一時暫らく閉鎖された。
その時、間抜けな弁公の奴、鈍刀なまくらで、横っ腹を突かれたのがもとで、身動きも出来ねえことになる。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
「なまじっか勉強の旗揚げをして好い成績が取れないと藪蛇になる。君も僕も本気にならないところが値打だ。侍なら刀を抜かない。抜かないから、正宗か鈍刀なまくらか分らない」
勝ち運負け運 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
たとえどんな鈍刀なまくらにしろ引合わぬということはない。亭主の機嫌が少し直り
重「これは蹈めません、鈍刀なまくらで、ようやく一両二分ぐらいなものでございます」
鈍刀なまくらじゃ、四本ともことごとく鈍刀じゃ。お返し申す」
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
高みゆく砥石といしの響——鈍刀なまくらえゆくすべり——
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
竹童は、ほのおのついた松明たいまつで、蛾次郎の鈍刀なまくらをたたきはらい、とっさに、わしをばたばたと舞いあげた。蛾次郎はそのするどいつばさにはたかれて
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この次郎左衛門はこれまでに幾たびとなく血の雨を浴びて来た男だ。貴様たちの鈍刀なまくらがなんだ、白痴こけ秋刀魚さんまを振り廻すような真似をしやあがったって、びくともするんじゃあねえぞ。
籠釣瓶 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「その牛刀が案外鈍刀なまくらと来ていますからな。ハッハハハハ」
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
文「そんな鈍刀なまくらでは人は斬れません」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
鈍刀なまくらのすべるひらめき。
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
なんでたまろう、二じょう白虹はっこう、パッと火花をちらしたかと思うと、燕作の鈍刀なまくらがパキンと折れて、こおりのごとき鋩子きっさき破片はへん、クルッ——と虚空こくうへまいあがった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ただひびくるく鈍刀なまくら
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
『知れたこってす。折れる刀、曲がる刀、どんな鈍刀なまくらを作ろうと、わたしはわたしだ。いちど養子に行った者を戻して、その弟の腕など借りたくはありません』
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彗星すいせいのように現われた彼の名声は、ただ秘伝口伝や門流のからにかくれて、偉そうな切銘と見てくれで無事泰平な鈍刀なまくらばかり叩き馴れて来た無数の刀鍛冶たちへ
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
つまらぬ鈍刀なまくらばかりをお前の家では手がけていると見えるな。そういう研師とぎしの手にかけるのは心もとない。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「——なぜこの刀は、研げないのでござろうか。研いでもいのない鈍刀なまくらというわけであろうか」
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「親分がそれまでに目をつけるからには、いずれ鈍刀なまくらじゃござンすまいね」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ウム、これは少し、鈍刀なまくらだな」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)