金煙管きんぎせる)” の例文
竪川の——その頃はよく澄んでいた水に、ポンとはりほうって、金煙管きんぎせる脂下やにさがりにくわえたことに何の変りもありません。
戸を開けて、立ちながらそッと呼ぶと、お絹は、金煙管きんぎせるに持添えた、女持ちの嵯峨錦さがにしきの筒を襟下に挟んで、すっと立った。
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
金煙管きんぎせるたばこひと杳眇ほのぼのくゆるを手にせるまま、満枝ははかなさの遣方無やるかたなげにしをれゐたり。さるをも見向かず、いらへず、がんとして石の如くよこたはれる貫一。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
文金の高髷たかまげ銀釵筥迫ぎんさんはこせこ、どこの姫様ひいさまかお嬢様かというふうだが、けしからぬのはこのお方、膳の上に代りつきのお銚子ちょうしえ、いき莨入たばこいれに細打ほそうち金煙管きんぎせる
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
満枝は金煙管きんぎせる手炉てあぶりふちちようちて、男の顔に流眄ながしめうらみを注ぐなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)