醜女しこめ)” の例文
そして畸型の醜女しこめの代りにアキの美貌に思ひついた満足で私の好色はふくらみあがり、私は新たな目的のために期待だけが全部であつた。
いづこへ (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
「なにが意外だ。藤夜叉にしろ、小右京にしろ、醜女しこめであったら、つまらぬはなし。つまりは美女であればこそ、ごうえると申すものだ」
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
多分、浮気者の源吉が、ほんの出来心で、たった一度ふざけたのだろうが、醜女しこめのお越にとっては、命がけの事だった。
浪江は「おこぜ」という綽名あだなのある醜女しこめで、年は二十六歳、色の黒い肩の怒った、肉太の大きな女である。
蕗問答 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
女性の何人なんぴとも化粧をするのはい、可憐かれんである。美女は美女なりに、醜女しこめは醜女なりに、いかにも女性の心の弱さ、お洒落しゃれさ、見栄坊みえぼうであることを象徴して好い。
女性の不平とよろこび (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
といって、愛嬌はあるが、寸分も美人ではない。まあ、十人並というよりも、醜女しこめのほうに分があろう。
人外魔境:08 遊魂境 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
その配置さえ適当にすれば醜女しこめたちまち絶世の美女となるわけさ……といっても真逆まさかシンコ細工のようにちょいちょいするわけには行かんから、勢いモデルが必要となる。
地図にない島 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
老女に醜女しこめをなぜ選んだか? 美しさを引き立てようためだったのだ。満知姫自身の美しさを。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「とても昔なら醜女しこめとよばれるのだが、当世では美人なのか。」
明治美人伝 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
お美しい方の傍では、醜女しこめなおみにくうございますね。8810
「あの人が、素敵もない美人の一人ぢやないたつて、あの人は、決して醜女しこめぢやないし、それにそりやあいゝ人だよ。それにあの方のお目にやあ、あの人はとても綺麗に見えるのさ、誰だつて、それは分るよ。」
黄泉よみ醜女しこめ嫉妬ねたみあり
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
そして畸型の醜女しこめの代りにアキの美貌びぼうに思いついた満足で私の好色はふくらみあがり、私は新たな目的のために期待だけが全部であった。
いずこへ (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
そして、何を訊いても首を振るばかりで、一向らちがあかず、さすがの平次もこの醜女しこめの寢間——世にもなまめかしい場所を見棄てる外はなかつたのです。
「今日こそ、お胸の底をたたいておく日と、直義は、足利一族の運命のわかれを負ってお訊きしたのだ。ひとの持つ嫁、その嫂が美人であろうと醜女しこめであろうと、知ッたことか」
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また来たわよ、ご迷惑ねえ——と、言われるときのあの気持といったら、悪女、醜女しこめも典型的なおのぶサン。三十六貫の深情かと思うと、胃のなかのものがゲエッと出てくるような感じ。
人外魔境:08 遊魂境 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
畳をめさせられた額の赤痣は火のごとく燃えて、醜女しこめの怨みの眼は、毒蛇のようにキラキラと光ります。
畳をめさせられた額の赤痣は火のごとく燃えて、醜女しこめの怨みの眼は、毒蛇のようにキラキラと光ります。
喜太郎はませた利口な少年で、お早は鈍重どんちようで人の良い醜女しこめといふ外には言ふべきこともありません。
三十二三のお吉は働くのと溜める外には興味のありそうもない、恐ろしく頑丈な醜女しこめです。
その女房のおいくは、正直者らしい醜女しこめで、たいしたたくらみがありさうもなく、その上二人の青侍と一緒に、夜分はお長屋に籠つて、子供の世話に餘念もないことがわかりました。
三十二三のお吉は働くのと溜める外には興味のありさうもない、恐しく頑丈な醜女しこめです。
まさか美男の源吉が人三化七にんさんばけしちのお越に手を出さうとは思はなかつたよ。多分、浮氣者の源吉が、ほんの出來心で、たつた一度ふざけたのだらうが、醜女しこめのお越にとつては、命がけの事だつた。
十八娘のお勢は、醜女しこめの娘らしくもなく言ひきるのでした。