配偶つれあひ)” の例文
しかし、この思ひがけない挨拶は、のつそりのつそり歩を進めてゐる亭主の、めかしたてたその配偶つれあひには、あんまり嬉しくなかつた。
もう一人、お稻の後ろに引添ふやうに、美しい顏を俯向うつむけて居るのは、お由といつて先代の配偶つれあひの遠いめひで、十九になつたばかり。
萠黄色もえぎいろの、活々いき/\としたうつくしい眼附めつきわしよりも立派りっぱぢゃ。ほんに/\、こんどのお配偶つれあひこそ貴孃こなたのお幸福しあはせであらうぞ、まへのよりはずっとましぢゃ。
怠けものの配偶つれあひの肥つた婆さんは、これは朝から晩まで鞣革なめしがはをコツ/\と小槌で叩いて琴の爪袋を内職にこしらへてゐる北隣の口達者な婆さんの家の縁先へ扇骨木かなめ生籬いけがきをくゞつて來て
崖の下 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
振り返ると、無口な源助も、その配偶つれあひのお冬も、はねつ返りのお徳も、妙に氣色ばんで、平次の後ろへ詰め寄つて居るではありませんか。
お靜は思はず顏を赧らめて、襟に顎を埋めましたが、おとなしいやうでも岡つ引の配偶つれあひは、それぐらゐの技巧がないとは言ひきれません。
銭形平次捕物控:239 群盗 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
三年前配偶つれあひに死なれて、若い妾のお國を入れるために、世間體を兼ねた上、嫁への義理で名ばかりの隱居をしたやうなもので
殿樣御手に掛けられた上、弟内匠まで——配偶つれあひのことで斬られるやうなことになつては、志賀家代々の御先組にも相濟みません
「間違ひぢやございません。母親のお加世樣とお配偶つれあひの關樣が御覽になつて、確かに内匠樣に相違ないと仰しやるのですから」
お氣の毒なことに、——配偶つれあひのお妻さんには、自分を親類へ泊りにやつて自殺した、御隱居八郎兵衞さんの氣持はよく判つた。
「お待たせいたしました。錢形の親分さんださうで、丁度いゝ方にお目にかゝりました。私は大川屋の配偶つれあひで、米と申します」
品の良さと、人に下らぬ自尊心がなかつたら、それは誰が見ても、名醫朝井玄策の配偶つれあひで、流行醫者朝井玄龍の隱居とは受取れない姿です。
「その爲に配偶つれあひの私の母とも別れ、娘の私だけ引取つて、母がその日の暮しにも困つて居るのを知り乍ら、十年越し仕送りもしませんでした」
それを、假にも親となり、配偶つれあひとなつたればこそ、いやな顏もせず、何んの不自由もさせずに、斯う安穩に養つてくれます。——喃、お父さん
それでも亡くなつた主人の配偶つれあひには相違なく、舊家だけに、いざとなると驅けつけて來る親類だけでも大變な數になります。
「ありますよ。小さい寶物ぐらで、奉公人は足も踏み入れませんが、この間から御用人の堀樣とそのお配偶つれあひのお瀧さんがちよく/\入るやうで——」
色の淺黒い、知的な感じのする、なか/\の男前で、これならば多世里の配偶つれあひとして、三千五百石の板屋家を繼がせても差支へはないと思はせます。
「尤も、浮氣をする男の配偶つれあひは、何時捨てられるかもわからないから、大概たいがい無理をしてもほまちをこさへるものだよ」
「槍の穗は宇古木家に傳はる、何んとかの名槍ださうですよ。相生あひおひ町の前島左近の配偶つれあひ——宇古木兵馬の義理の妹が言ふんだから間違ひはありません」
「まだありますよ。橋場で殺された佐太郎は、勿體なくも主人の配偶つれあひのあのお染さんに夢中だつたんですつてね」
盜られて了つては、配偶つれあひが死んでから十五年の間の、骨をけづるやうな苦勞も、皆んな無駄になつてしまひました
主人の妹の配偶つれあひで、何彼と差出る與三郎に對して、あまり良い感じを持つて居ないことは事實かも知れません。
斯う言ふわけでさ、相澤半之丞は三年前に配偶つれあひに死なれて、それから知行所から呼んだ下女のお組といふのを
「七年前まで、谷口樣と私の配偶つれあひの小倉嘉門と、右隣の矢並樣御先代伊織いおり樣とは、御同藩でございました」
介抱してゐたのは、内儀のお光で、これは二十五六、脂の乘つた、非凡の美しさですが、大町人の配偶つれあひとしては少し意氣過ぎ、前身に唯ならぬものを匂はせます。
「阿波屋の主人を殺すほど怨んで居る者は、家中には元の配偶つれあひのお島さんの外には無いといふのですよ」
「隨分、自分の金を溜めたことでせうが、配偶つれあひも子もない孫三郎さんのあとは、どういふことになります」
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
「お前さんか、配偶つれあひが縛られたといふのは? 一體どうしたことなのだ。落着いて話して見るがいゝ」
「このまゝではしかし、助ける見込みはない。そればかりでなく、お前の配偶つれあひのお絹も、いづれは猿江町の親分に縛られて、ひどい目に逢はされることになるだらう」
徳三郎は太い男だ。する事が一々憎いよ。主人の配偶つれあひお信を殺したのもあの野郎の仕業だらう、瓶へたつた一枚の文錢を投り込んで遺言状を僞物と思はせ、菊之助を
顏見知りの久藏、——死んだ隱居の配偶つれあひの妹の亭主、男藝者などをしてゐた、評判の宜しくない五十男が、眼顏で八五郎を人氣のない奧の一間へみちびき入れるのでした。
三年目に矢並樣先代伊織樣は病死、續いてこの春私の配偶つれあひ小倉嘉門も、お隣りの谷口樣のところに招かれて、したゝかに酩酊して歸り、その夜のうちに相果てました。
相生あひおひ町の小左衞門長屋、浪人前島左近の配偶つれあひぢや——この前の騷ぎの時も娘は留守であつたが」
十年前に配偶つれあひに先立たれ、四、五年前から中風で足腰の自由を失ひ、二年前からは寢たつきりで、家督かとくは養子の矢之助に讓り、何不自由なく養生して居るといふことです。
主人の彦七はまだ四十二三、頑丈さうな身體と、弱さうな神經を持つた典型的な旦那衆で、檢屍が無事に濟んで、改めて配偶つれあひうしなつた悲歎にさいなまれて居る樣子です。
お城大工の柏木藤兵衞は、早く配偶つれあひを失つて娘のお勇一人を相手に、淋しく暮して居たのです。
いえ、御浪人ですから、身分違ひ釣り合はないからと、私の配偶つれあひは氣が進まなかつたやうで御座います。小商人こあきんどの婿には、矢張り小商人が宜いと思ひ込んでゐた樣子で——
「三年ほど前——母が死んで不自由してゐる時。若い時こゝに奉公してゐたお松が、四十近くなつて配偶つれあひに死に別れ、一人で暮らしてゐると聽いて、父が呼び寄せました」
近所で聞いてみると、大川屋の主人といふのは、働き盛りの四十男ですが、早く配偶つれあひを失ひ、先年吉原で馴染を重ねた華魁おいらん請出うけだして、親類の承諾しようだくを得て後添に直しました。
先代の配偶つれあひで、惣領の主水を生んだ正室お玉の方といふのは、身合も由緒も立派な家の出でしたが、さう美しいといふほどの奧方ではなく、惣領主水を生んで間もなく他界し
「申上げにくいことですが、いづれは知れずに濟まないことと存じます。加州の支藩、とだけ申しませう。私の配偶つれあひは江戸御留守居、谷口樣と矢並樣御先代は御倉屋敷の係りで」
主人あるじの二度目の配偶つれあひで——もとのお内儀さんでした——それは、憎らしい程綺麗な人」
小三郎さんは父さんの本當の子ですが、母親は深川の藝者で、親類の手前や、配偶つれあひの思惑があつたので、誰にも知らさずに、船頭の浪五郎といふ人に、お金をつけてやりました。
お粂が自分から飛出せば、菊之助とお勇は丁度良い配偶つれあひぢやないか。二人一緒になれば、從兄妹いとこ同士で越前屋が立てられる。勝造は娘の出世になることだから、自然遠退くだらう。
「それ見るがいゝ。お前の配偶つれあひは、その御家人喜六と、もう一人の年増に殺されたんだ。今夜は俺のところへまで毒酒を持込みやがつたよ。はふつて置くと何をやり出すか解らない」
「飛んでもない、甚兵衞には怨もあるが、その配偶つれあひには何んの怨もありやしません」
「その系圖けいづを搜し出して、龍之口に訴へ出ると、いづれ詮議の上、お孃さんのお配偶つれあひは、少くとも御旗本御家人に取立てられ、祖先のお手柄で、お孃樣の立身出世にもなる譯ですが」
耻を打あけるやうだが、私の女房には、前に配偶つれあひがあつた。お藏前の名ある商人あきんどだつたが、勝負事に身を持ち崩し、一人の女房にまで別れて、氣の毒なことにやくざ仲間に入つて居る。
あの娘は、——くなつた私の配偶つれあひの連れつ娘ですが、あれは鬼でございました。
「飛んでもない。私は死んだ最初の配偶つれあひの弟で、居候をして居るだけの事ですよ」