郷党きょうとう)” の例文
そうして次に三において『論語』の内の古い層として学而がくじ郷党きょうとうの二篇および為政いせい八佾はちいつ里仁りじん公冶長こうやちょう雍也ようや述而じゅつじ子罕しかんの七篇を見いだした。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
同じことなら背景の好いのをと思って念を入れたのか、僕よりズッとおくれて結婚した。郷党きょうとうの先輩で財界の有力者に見込まれて、その令嬢を頂戴したのである。
首切り問答 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
かりにただ一人の愛娘まなむすめなどを失うた淋しさは忍びがたくとも、同時にこれによって家のとうとさ、血の清さを証明しえたのみならず、さらにまた眷属けんぞく郷党きょうとうの信仰を
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
人類も、またその数に洩れず、男女あって夫婦あり、夫婦あって親子あり、しかして兄弟姉妹あり、一家眷族けんぞくあり、しかして郷党きょうとうあり、社会あり、国家あるのである。
現代の婦人に告ぐ (新字新仮名) / 大隈重信(著)
幾年ぶりの帰郷に、音楽修業をしたドヴォルシャークは、当然郷党きょうとうに示す土産みやげがなければならなかった。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
特に撰抜せられて『十八史略』や、『日本外史』の講義をなし、これを無上の光栄と喜びつつ、世に妾ほど怜悧なる者はあるまじなど、心ひそかに郷党きょうとうに誇りたりき。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
其頃は十六七のにこにこした可愛い息子でした。それが適齢になって兵役に出で、満洲守備に行き、帰って結婚してもう四人の子女の父、郷党きょうとうのちゃきちゃきです。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
それで学校においても郷党きょうとうにあっても、とくに人から注目せられる少年ではなかった。
非凡なる凡人 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
人々は己を倨傲きょごうだ、尊大だといった。実は、それがほとん羞恥心しゅうちしんに近いものであることを、人々は知らなかった。勿論もちろん、曾ての郷党きょうとうの鬼才といわれた自分に、自尊心が無かったとはわない。
山月記 (新字新仮名) / 中島敦(著)
ことに彼自身、二十余歳まで眼に国語を知らず、郷党きょうとうに笑はれたなどと韜晦とうかいして人に語つたのが、他人の日記にもしるされてあるので、一層この間の彼の文学的内容生活は、他人の不思議さを増させた。
上田秋成の晩年 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
今よりのちは大いにそれを取り出して、独り郷党きょうとう知己ちきの間のみならず、弘く世の中のために利用してもらう必要がある。すでに家と家との目の見えぬ垣根かきねは取れた。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
上論各篇の間に重複する文句のない篇を求めて行くと、一方に学而がくじ郷党きょうとうの二篇があり、他方に為政いせい八佾はちいつ里仁りじん公冶長こうやちょう雍也ようや述而じゅつじ、一つ飛んで子罕しかんのほぼ連続した七篇がある。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
四隣しりん郷党きょうとう一様に、和やかにその一日を送ろうとする。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)