過敏かびん)” の例文
あたま過敏かびんすぎると、くちや、手足てあしはたらきがにぶり、かえって、のろまにえるものです。純吉じゅんきちは、少年しょうねん時分じぶんにそうでありました。
からす (新字新仮名) / 小川未明(著)
ここでは旧套きゅうとうの良心過敏かびん性にかかっている都会娘の小初の意地も悲哀ひあい執着しゅうちゃくも性を抜かれ、代って魚介ぎょかいすっぽんが持つ素朴そぼく不逞ふていの自由さがよみがえった。
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
どこの陣屋で飼っているのか、鶏の声がし出すと、藤八郎も半右衛門も、とかく過敏かびんな眼いろだった。が、さすがに将監は、何気ない亭主ぶりを振舞いながら
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「さあいずれ模様を見まして、鶏やあひるなどですと、きっと間違いなくふとりますが、斯う云う神経過敏かびんな豚は、あるいは強制肥育ではうまく行かないかも知れません。」
フランドン農学校の豚 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
お政はずいぶん神経しんけい過敏かびん感情的かんじょうてきな女であるけれど、またそうとうに意志いしの力を持っている。たいていのことはむねのうちに処理しょりして外に圭角けいかくをあらわさない美質びしつを持っている。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
ことに少しく神経過敏かびんなものになると、なおさら不愉快を深く感ずる。無頓着むとんじゃくと称される豪傑肌ごうけつはだの者でさえも、そのじつなかなか心を悩まし、自分に対する悪口に無頓着なることは出来ぬ。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「ずいぶん神経過敏かびんな人だ。すると病気でないものは僕とクォーツさんだけだ。」
楢ノ木大学士の野宿 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
とおまさが、ことにふれての母にたいする述懐じゅっかいはいつでもきまってるが、どうかすると、はじめは平気へいきに笑いながら、気違いのうわさをいうてても、いつのまにか過敏かびんに人のことばなどを気にかけ
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)