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這入
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はひら
餘所に見るとは何云心の人なるぞ殊には自分の
身勝手のみ
云散すは鬼か
蛇か思へば/\
情なやと愚痴の出るも道理なり偖裏口より入んと思ふに
灯は
萬燈の如く大勢なる他人の居る中へ
斯窶然き姿にて
這入ん事此家の手前も有ば
如何せんと
少間彳み居たりしに
傍に寢て居し一疋の犬
怪しく思ひてや齒を
尋ねけるに二三年以前
相果娘お節は
親類へ引取れし由
故偖々變り果たる浮世かなと
呟きながら
鞠子の
宿も
越宇都谷
峠に
懸りしに
蔦の
細道時雨來て心
細くも
現にも夢にも人に逢ぬ
日と
辿り/\て岡部より
早藤枝に來りし頃
跡になり先になり
怪し
氣なる者二三人付
添來れば
故譯と
相良街道へは
這入ず既に瀬戸川迄來りし時日は