はし)” の例文
舟は桃花村のある方へ白い水脈をひいて、目ぐるわしくはしった。眠元朗の目は湿うるおうてそのもてあそぶ砂は手のひらを力なげにこぼれた。
みずうみ (新字新仮名) / 室生犀星(著)
とは思わず口頭くちさきはしった質問で、もちろん細君が一方ひとかたならず同情を主人の身の上に寄せたからである。しかし主人はその質問には答えなかった。
太郎坊 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
力をあはせて、金盤一つさし上げたるがその縁少しくそばだちて、水は肩にはしり落ちたり。丈高く育ちたる水草ありて、露けき緑葉もてこの像をおほはんとす。
だが私の心が急ぐのは国を一つ越えた先の日田ひたである。平野の尽きたところに筑後川がはしる。河は急に二つの山を引きつけて岩を砕きながら私の方に走る。
日田の皿山 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
またアキスは女魅ガラテアに愛されたが、円眼鬼チクロプスポリフェムス嫉み甚だしく大岩で彼を圧殺し血はしり出るをガラテアがエトナ山下のアキス川に化したという。
ぼくとて何かしらのイミテーションかも知れないが、とにかく、長さんや、ぼくははしったですよ。時に停滞しても、時に迸ったです。北川君の一生は迸ったことがないね。
街はふるさと (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
老父には真剣に娘の身の上をおもう電気のようなものが、はしり出した。
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
水のはしるやうな此の音のするどさ
げん支吾しごあらんには、巌石がんせき鶏卵けいらんを圧するの勢を以て臨まんとするの状をし、昺貴へいきの軍の殺気のはしるところ、をば放って府内に達するものすら有りたり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
朕が眷属の闇きより闇きに伝ひ行く悪鬼は、人の肺腑に潜み入り、人の心肝骨髄しんかんこつずゐひ入つて絶えず血にぞ飽く、視よ見よ魔界の通力もて毒火を彼が胸に煽り、紅炎ぐえんこれが眼よりはしらせ
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
途端に今まで黙っていたりし女は急に呼びとめて、この二三日にのっそりめにうたか、と石から飛んで火の出しごとく声をはしらし問いかくれば、清吉ふりむいて、逢いました逢いました
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
さすがは気早き江戸ッ子気質、草履つつかけ門口出づる、途端に今まで黙つて居たりし女は急に呼びとめて、此二三日にのつそりに逢ふたか、と石から飛んで火の出し如く声をはしらし問ひかくれば
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
上 母はあらしはしる梅
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)