まご)” の例文
その見附からない間隙を漸やく見附けて、此処ここぞと思えば、さて肝心のいうことが見附からずまごつくうちにはや人に取られてしまう。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
ボウルドの前へ出ようとして中戻ちゅうもどりをしたり、愚図ぐず々々まごついてる間に、たくが鳴って、時間が済むと、先生はそのまんまでフイと行ってしまうんだッて。
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
第一には大道砥だいどうとのごとしと、成語にもなってるくらいで、平たい真直な道はわだかまりのないさわやかなものである。もっと分り安く云うと、眼をまごつかせない。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
藪から棒に、つかぬことを聞かれて、私もちょっと返事にまごついた。
世間師 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
すると窓の外から橋本の声で、おいおいちょっと出て見ろと呼んでいる。れまだそこいらをまごついてるなと思うと、少し面白くなったから、請求通せいきゅうどおり原の中へ草履ぞうりのまま出た。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
とうとう余は調査課へ来るような訳になったものの、そのじつ世間の知るごとき人間なんだから、こう真面目まじめに、どう云う方面の研究をやる気かと尋ねられるとはなはだまごついてしまう。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ひとを置き去りにして、何とかして何とか、てててててと云ううたをうたって、大いにじらして置いて、他が大迷おおまごつきに、まごついて、穴のかどへ頭をぶっつけて割って見ようとまで思ったあげく
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
こう決心をして、東西南北の判然しない所を好い加減にまごついていた。非常に気がいて息が切れたが、めちゃめちゃに歩いたために足の冷たいのだけはなおった。しかしなかなか出られない。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
見当けんとうの立たない津田はいよいよまごついた。夫人は云った。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)