贅沢三昧ぜいたくざんまい)” の例文
贅沢三昧ぜいたくざんまいに日を送りたいという考えで、人の妻になるものもすくなくないとの事であるが、誠に不心得極まる現象と言わねばならぬ。
夫婦共稼ぎと女子の学問 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
しかも六郎兵衛自身は、伊達兵部から多額な金を取り、道場の収入も殆んど独占し、素姓の知れない女を三人も抱えて、贅沢三昧ぜいたくざんまいに暮している。
自分達ばかりが贅沢三昧ぜいたくざんまいふけりながら、女中にはほんの四、五時間の睡眠のほか何らの休息をも与えなかった人々なのだ。
妖怪でした。贅沢三昧ぜいたくざんまいの生活をしていながら、生きているのがいやになって、自殺を計った事もありました。何が何やら、わからぬ時代でありました。
小さいアルバム (新字新仮名) / 太宰治(著)
お前様が、ほんとうにこの寮に長くいてくれる心算つもりなら、五人扶持、十人扶持も取らせましょう。いえ、もッと贅沢三昧ぜいたくざんまいにもさせてあげましょうぞえ。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
弘一君は一人息子なので、広い邸を我物顔わがものがおに、贅沢三昧ぜいたくざんまいに暮していた。親爺おやじは陸軍少将だけれど、先祖がある大名の重臣だったので、彼の家は却々なかなかのお金持ちである。
何者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「僕は生れてから今日きょうまでぎりぎり決着の生活をして来たんだ。まるで余裕というものを知らず生きて来た僕が、贅沢三昧ぜいたくざんまいわがまま三昧に育った人とどう違うと君は思う」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
贅沢三昧ぜいたくざんまいを言い出す恥知らず、図々しさが、我慢にもしゃくにさわってたまらないのでしょう。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
左近倉平のやしきは、大会社の重役ほどの豪勢なものでした。親譲りの財産を持っていた上、見掛けよりは金儲けが上手で、音楽家にしては珍らしく、贅沢三昧ぜいたくざんまいな暮しをしていたのです。
「おれは握るだけの金を握った、大阪に家も買ってある。一生遊んで、贅沢三昧ぜいたくざんまいに暮す準備がすっかり出来ているんだ」
風流太平記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
悪妻も悪妻だし、嫁に来てからみ通しだったんだよ。のべつ医者よ薬よ、別荘行きよと、贅沢三昧ぜいたくざんまい
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
主人は三十二三、大町人の若隠居が、遊芸に打込んで、贅沢三昧ぜいたくざんまいの日を送っているといった様子です。物言いの柔らかさ、恰幅かっぷくの立派さ、相対しているガラッ八は、なんとなく圧倒され気味です。
銭形平次捕物控:124 唖娘 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
男女の雇人を十五人も置いて贅沢三昧ぜいたくざんまいに暮らしている、あるじの持助はまだ二十五六だが、どんなに金満家なのか木山という木山を片端かたっぱしから買いあさり
やいやい日ごろはさんざッ腹、おかみろくを食らって、贅沢三昧ぜいたくざんまい、あげくに下々しもじもの中を、肩で風を切って歩く奴がよ、俺たちの前に両手をついて、兄哥なんていっていいのかい。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
貧しい多数の人たちが餓えているのに、富裕な者はその眼の前で贅沢三昧ぜいたくざんまいをして恥じない。武家でも富んだ町人から持参金付きの嫁や婿を入れて、それがさほどまれなことではなくなっていた。
つばくろ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「われわれにはかゆすするほどの手当しか呉れず、道場や出稽古の謝礼はみんなとりあげたうえ、自分だけはいかがわしい女を三人も抱えて贅沢三昧ぜいたくざんまいに暮している、これでもなかまの生活といえるか」