賭事かけごと)” の例文
しかも向うからもちかけても来なかった娘を、突然妻に選ぼうとは、まったく賭事かけごとみたいな沙汰さたらしく見えるのであった。
「僕は君と交りを絶つ前に一言云っておく。生死を背景にした賭事かけごとは云わないようにし給え。これが僕の最後の忠告だ。」
二つの途 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
賭事かけごとではむろん由夫がうわ手である。今日も、彼は、竜一をうまくおだてて、蝗の首取り競争を始めたところなのである。
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
若殿と二人で夜おそくまで、宿の女中にたわむれて賭事かけごとやら狐拳きつねけんやら双六すごろくやら、いやらしく忍び笑いして打興じて、式部は流石さすがに見るに見兼ね
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
賭事かけごとの好きなものは、金を持つちや居られないものらしい。船頭の爲五郎もそれに誘はれて遣ひ始めたことだらう、それから、新内の太夫は?」
この他にも賭事かけごとや勝負に関する記事のあるところを見ると著者自身かなりの体験があったことが想像されて面白い。
徒然草の鑑賞 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
それまでは、幸と不幸との賭事かけごとの中で局外者のように平気でいる。彼らはその間に置かれた賭金でありながら、不関焉かんせずえんとして両方をぼんやりながめている。
ジョンは滅茶苦茶に賭事かけごとをして何時もとられてばかり——可哀相な子! あの子は詐欺師ぺてんしに取圍れてゐるのだ。
集まりというのは、何かの賭事かけごとを意味しているこの一連の、どうらく者の集まりに相違ない。
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そして、だが来るか、来まいか、などとつい今朝も、賭事かけごとのように噂していたものだった。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
酒も呑まず賭事かけごとにも手を出さず、十二三歳の時から、馬で赤城あかぎたきぎを採りに行ったりして、馬を手懐てなずけつけていたので、馬に不思議な愛着があり、競馬馬も飼い、競馬場にも顔がきいていた。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
晴さんとて其夜は其儘我が家に歸りしが其後明暮あけくれ心懸てぞ居たりける然るに同宿に三五郎と云者あり此三五郎は侠氣をとこぎある者にて生得しやうとく博奕ばくちを好み平生賭事かけごとのみを業としけるが或時博奕場ばくちばよりもどり食事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
大胆な賭事かけごと
四次元漂流 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「吉三郎なら知つてゐる。賭事かけごともしない樣子だが、妙に金廻りのいゝ野郎だ、——その吉三郎と何處で知合になつた」
「正季。じつは一戦の所存をきめたぞ。あぶない賭事かけごとを、われから仕かけるには似るがの」
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その心情が痛ましくなり、小僧を二人もつかっていた相当の靴屋を、競馬道楽や賭事かけごとった果てに、自転車を電車にぶっつけ、頭脳あたま怪我けがをしたりして、当分仕事もできなくなってしまった
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
運命と賭事かけごとをし、娘らをその賭物としてること。
調べているよ。御家人のくせに賭事かけごとって首も廻らぬ借金だ。一時は御家人の株まで売ろうとしたが、二三日前から急に金が出来て、ポツポツ借金を返し始めた
むだとは思うが、念のため幻術めくらましの囲いへ行って訊いてみなさるがよい。あそこではよく、ガチャ蠅が集まって、銭の賭事かけごとをしておりますで、そういう金をつかめば、ことによると、賭場あそびばへ顔を
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「とんでもない、親分さん。——以前は楊弓に凝ったこともありますが、近頃は賭事かけごとと名のつくものは、子供の玉ころがしも振り向いて見ないようにしております」
「御主人が封印を遊ばして、いざ私の封印といふ時、中間ちうげん部屋で大喧嘩が始まつた、——賭事かけごとの爭ひらしかつたが、私が行つて止めると、顏を見ただけでピタリと納まつた」
俺はもう、中坂の藤井重之進の内向うちむきのことを調べてゐるよ。御家人のくせ賭事かけごとつて首も廻らぬ借金だ。一時は御家人の株まで賣らうとしたが、二三日前から急に金が出來て、ポツポツ借金を