ゐのこ)” の例文
食後の半時間——この半時間の無駄話は、そんぢよそこらの日本の紳士をゐのこのやうな馬鹿者にしてくれた。何といふ有難い事だ。
そのさまあたかも未だ巨人島にわたらぬガリワルの如く、また未だガリワルを見ざる「リリピユウシヤン」の如く、ゐのこを抱いて臭きことを忘れ、古井の底にみて天をうかゞふ。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
灰色の巨人おほびとが榛の間にゐのこを駆つて行くかと思ひますと、大ぜいの矮人こびとが紅い帽子をかぶつて、小さな白い牝牛を、其前に逐つて参ります。私は灰色の人ほど、矮人を怖くは思ひませぬ。
久しく我等を賤みたり、我等に捧ぐべき筈の定めのにへを忘れたり、這ふ代りとして立つて行く狗、驕奢おごりねぐら巣作れるとり尻尾しりをなき猿、物言ふ蛇、露誠実まことなき狐の子、汚穢けがれを知らざるゐのこ
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
色黒くまゆ薄く、鼻はあたかもあるが如く、くちびる厚く、まなじり垂れ、ほゝふくらみ、おもてに無数の痘痕とうこんあるもの、ゐのこの如くえたるが、女装して絹地に立たば、たれかこれを見て節婦とし、烈女とし、賢女とし
醜婦を呵す (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
(ホメロスの詩に徴するに、トロヤの戰果てゝ後、希臘ギリシアイタカ王オヂツセウスこの島に漂流せしに、妖婦キルケ舟中の一行を變じてゐのことなす、オヂツセウス神傳の藥草にて其妖術を破りぬといふ。)
はた、わが肉よりはらひ給ひしゐのこを見いづ。
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
逍遙子が沒却理想の分際よりわれを見ば、まことに未だ河東の地をまずして白頭のゐのこをことなりとする人に似たらむ、また未だジユリエツトにはずして、ロザリンを慕へるロメオに似たらむ。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
はた、わが肉よりはらひ給ひしゐのこを見いづ。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
ゐのこ狗兒いぬころ、野の狐
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)