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豐干
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ぶかん
道翹が
答へた。「
豐干と
仰やいますか。それは
先頃まで、
本堂の
背後の
僧院にをられましたが、
行脚に
出られた
切、
歸られませぬ。」
道翹は
蛛の
網を
拂ひつゝ
先に
立つて、
閭を
豐干のゐた
明家に
連れて
行つた。
日がもう
暮れ
掛かつたので、
薄暗い
屋内を
見𢌞すに、がらんとして
何一つ
無い。
「もう
餘程久しい
事でございます。あれは
豐干さんが
松林の
中から
拾つて
歸られた
捨子でございます。」