讃歌さんか)” の例文
国政についてはもとより太后の御手腕を云々すべきではない。また生前の讃歌さんかが、藤原一門なるゆえとのみ断ずるのも不当であろう。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
あの男の書いたのは死の讃歌さんかだったのでしょうか? 喜びの歓声だったのでしょうか? あの男は死のもとへ行ったのでしょうか、それとも
機械の作が見劣るのは、自然の前にその力がなおも小さいしるしである。よき工藝は自然の御栄みさかえ讃歌さんかである。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
紙燭しそくを寄せて、懐紙に何やら筆を染めていたが、やがて、わきあがる感激を抑えようもなく、無我の声を、朗々と張りあげて、みずから書いた懐紙の讃歌さんかを唱えていた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
歌劇「金鶏きんけい」の「太陽への讃歌さんか」も有名だが取立てて言うほどのものはない。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
(雲の讃歌さんかと日のきしり)
『春と修羅』 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
讃歌さんか咽喉のみどをあふれて
焔の后 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
これこそはまた美への讃歌さんかではないか。純一な帰依きえに最も深い信仰があるように、単純な器にこそ、最も複雑な美が含まれるのである。あの色なき白光こそすべての色を含む。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
そして仏教ぶっきょう叡山えいざんにおけるがごとく、ここに教会堂きょうかいどうを建て、十聖壇せいだんをまつり、マリヤの讃歌さんかをたたえて、朝夕、南蛮寺のかわったかねが、京都きょうとの町へもひびいていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ただベスビオの山だけは、あいもかわらず永遠の讃歌さんかをとどろかしていました。その一つ一つの詩句を、人間は新しい爆発ばくはつと呼んでいるのです。わたしたちはビーナスの神殿しんでんに行きました。
あまりの沈黙と静謐せいひつ尨大ぼうだいで奇怪な生命力——それに対すると、私は抱擁せずむしろ狐疑逡巡こぎしゅんじゅんし警戒するのを常とした。生の讃歌さんかを否定するのではないか——これが私の仏像への危惧きぐであった。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)