調戲からか)” の例文
新字:調戯
何故といふに、村で一番不潔な男を親に持つたそのお牧の手に養はれたといふことは、絶えず私がひとから調戲からかはれる材料に成つて居ましたから。
そのくせ朝湯あさゆけるは、屹度きつと寐坊ねばうなさるのね」と細君さいくん調戲からかやう口調くてうであつた。小六ころくはらなかこれあに性來うまれつき弱點じやくてんであるとおもんでゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
『生憎と日向樣もまだ歸らないの。』と富江は調戲からかふ眼附で青年の顏を見た。其處へ白髮頭の小使が入つて來て用を聞いたので、女は何かお菓子を買つて來いと命ずる。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
小僧は笊に殘つてゐたすこしばかりのしゞみを、河の中へ底を叩いてあけてしまつた。お爺さんは掌に河水をすくつて、笊の底に乾ききつてゐる貝へかけてゐる。はたの若い者が調戲からかつて
佃のわたし (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
一層遲足になつて仲間から充分に調戲からかはれいぢめられるのである。
めたん子伝 (旧字旧仮名) / 室生犀星(著)
お牧の父親と言へば土地でも有名な穢い男でした。その娘に養はれると言つて、よく私はひとから調戲からかはれたものです。
『オヤ、その一人は?』と智惠子は調戲からかふ樣に目で笑ふ。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
假令たとへ鼻が低いと言はれようが、瞼が高いと調戲からかはれようが、女の身ながらに眼を見開くなら、この世に隱れてゐる寶と生命と幸福とが得られるといふこゝろもちを
桃の雫 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)