観破かんぱ)” の例文
智者はかえって智におぼれる——という。信玄は、誡めてみた。しかし、智を以てせずに、彼の智を観破かんぱすることはできない気もする。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
クリーサスの富をかたむつくしても相当の報酬を与えんとしたのであるが、いかに考えても到底とうてい釣り合うはずがないと云う事を観破かんぱして
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「そんな子供だまし見たいなことを、どうして伯父が観破かんぱ出来なかったのだろう。第一賊は黒い着物だったというのに、牧田はいつも白っぽい田舎縞を着ているじゃあないか」
黒手組 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
わたくしは、さっきから、この番頭の言葉に何かかすかななまりのあるのに気付きましたが、このおすんこによって秋田訛りであるのを観破かんぱしました。学園の割烹かっぽうの先生で秋田出身の割烹家があります。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
どうしてこれを一見して観破かんぱしたかを、その書では、得意な民治体験としてしるしているのであるが、いま蕭照の空腹にとらわれている頭をかすめたその記憶からは
人間山水図巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もっとも兄さんのような聡明そうめいな人に、一種の思わくから黙って見せるという技巧ぎこうろうしたら、すぐ観破かんぱされるにきまっていますから、私ののろいのも時には一得いっとくになったのでしょう。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
正当せいとう武芸ぶげいとはいわれぬ、幻術げんじゅつ遠駆とおがけなどの試合しあい提示ていじしてきたのを見ると、一同は、かれらのひきょうな心底しんてい観破かんぱして、一ごんのもとに、それをはねつけようと思った。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それをめる工夫をめぐらしたところは大いによいし、国家的な正しい政策ともいえるが、その創案の根本は、何よりも平家一門の安泰の為にあるという事は、誰でもすぐ観破かんぱできるので
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ぐらいで、その目的を不覚にも観破かんぱできなかった。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
這般しゃはん機微きびと大勢を早くも観破かんぱしたからである。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)