見交みかわ)” の例文
見違えるほどやつれ果てた顔に、著しく白髪しらがの殖えた無精髯ぶしょうひげ蓬々ぼうぼうと生やした彼の相好そうごうを振り返りつつ、互いに眼と眼を見交みかわした。
木魂 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
あなたと語り合うことは、おそろしく、眼を見交みかわすことが、楽しく、もくして身近くあるよりも、ただ訳もなく一緒いっしょに遊んでいるほうが、うれしかったのです。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
目を見交みかわしたばかりで、かねて算した通り、一先ひとまず姿を隠したが、心のやみより暗かった押入の中が、こう物色の出来得るは、さては目がれたせいであろう。
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その若侍は他の四人と眼を見交みかわした。すると左の端にいた一人が前へ出て来た。
改訂御定法 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
三人は余りの薄気味悪さに、黙りかえって顔を見交みかわすばかりであったが、宗像博士は、ふと何かに気づいたらしく、ポケットから拡大鏡を取出して、ガラス箱の表面のる一点をのぞき込んだ。
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
露子さんが三太郎君と顔を見交みかわすたんびに見せる何ともいえない、つめたい緊張した表情が、そうした露子さんの心の底の秘密をありのままに物語っているのでした。
(新字新仮名) / 夢野久作(著)
他の客たちはまた静かになり、眼を見交みかわしたり、ささやきあったりしていた。
あすなろう (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
スッカリ気を呑まれたらしく生命いのち知らずの連中が六人とも顔を見交みかわして眼を白黒さした。この印度人が尋常の人間でない事を感付いたらしい。私はイヨイヨ伯父に違いないと思った。
冥土行進曲 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
武丸のき活きした眼と眼を見交みかわした音絵は驚きふるえつつ次の間に退いた。
黒白ストーリー (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
僕と一緒に居残った奴は、島根県の何とかいう三十ばかりの鬚男ひげおとこだったが、広い教室のズット向うとこっちに離れて製図を遣るんだ。……お互に顔を見交みかわして泣き笑いみたいな顔をし合ったっけ。
焦点を合せる (新字新仮名) / 夢野久作(著)
表の見物人はまん丸にした眼を見交みかわした。
いなか、の、じけん (新字新仮名) / 夢野久作(著)