おおい)” の例文
寝衣ねまきえりをかき合せながら立っていってみると、おおいをかけた行燈のそばに、源六が前跼まえかがみになって、しきりになにかしていた。
柳橋物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
短い糸はつなぎ合せて玉にしてあり、それも木綿と絹とが別にしてあって、幾つかたまると蒲団ふとんおおいなどに織ってもらいます。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
「そんな乱暴なことをいうやつがあるか。電灯の笠には、チャンとおおいがしてあるし、窓には戸もしめてあるよ。外から見えないからいいじゃないか」
空襲警報 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その途中吊台のおおいすきから外の方を見ると、寒詣かんまいりらしい白衣びゃくえの一面にまんじを書いた行者らしい男が、手にした提灯ちょうちんをぶらぶらさせながら後になり前になりして歩いていた。
天井裏の妖婆 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
不用な灯火は消し、他の必要なる灯火は、屋外に灯がもれぬよう黒いおおいをかけて下さい……
空襲警報 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ねだいに寝た女が蒼白あおじろい左手を張り、そのてのひらで左の耳元を支えて、すぐ鼻端はなさきに腰をかけた男とはなしているところであった。緑色のおおいをかけた電燈の光が、なまめかしく榻の周囲まわりを照らしていた。
黄灯 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
懐中電灯にも、おおいがいる。上から直接見える火は、ことに用心しないといけない。
空襲警報 (新字新仮名) / 海野十三(著)