衣紋坂えもんざか)” の例文
……が、くるわが寂れて、遠く衣紋坂えもんざかあたりを一つくるまの音の、それも次第に近くはならず、途中の電信の柱があると、母衣ほろいかのぼり
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
平次と八五郎は、お妻の茶屋を出ると、衣紋坂えもんざかを下って、五十間を門並かどなみに、大門前までいろいろの事を訊ね廻りました。
お綱の名と姿に似る、衣紋坂えもんざかの見返り柳——その小暗いかげにたたずんで、かれは、ひそかにあてを狙っていた。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
平次と八五郎は、お妻の茶屋を出ると、衣紋坂えもんざかを下つて、五十間を門竝かどなみに、大門前までいろいろの事を訊ね廻りました。
しつ! だまつて/\と、くばせして、衣紋坂えもんざかより土手どてでしが、さいは神田かんだ伯父をぢはず、客待きやくまちくるまと、はげしい人通ひとどほり眞晝間まつぴるま露店ほしみせしろ西瓜すゐくわほこりだらけの金鍔燒きんつばやき
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
五十けんの両側に、暖簾のれんをならべている飲食店の内から、客や女が、いっせいに外へ飛びだしてみると、くるわ大門口おおもんぐちから衣紋坂えもんざかの方へ、一人の侍が、血刀を持ったまま、ぬすのように逃げて行った。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この髷切りの惡戯わるさは、一ヶ月ほど前から始まつたことですが、月のない眞つ暗な晩に限つて、新鳥越から衣紋坂えもんざかにいたる、所謂いはゆる土手八丁と言はれた日本堤で、何者とも知れぬ怪人に襲はれ
この髷切りの悪戯わるさは、一ヶ月ほど前から始まったことですが、月のない真っ暗な晩に限って、新鳥越から衣紋坂えもんざかにいたる、所謂いわゆる土手八丁と言われた日本堤で、何者とも知れぬ怪人に襲われ