行司ぎょうじ)” の例文
こんどはうさぎが行司ぎょうじになって、鹿しかくまみましたが、鹿しかはすぐつのごとくまにひっくりかえされてしまいました。金太郎きんたろう
金太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
今まで面白気おもしろげ行司ぎょうじ気取りで見物していた迷亭も鼻子の一言いちごんに好奇心を挑撥ちょうはつされたものと見えて、煙管きせるを置いて前へ乗り出す。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
数馬かずま意趣いしゅを含んだのはもっともの次第でございまする。わたくしは行司ぎょうじを勤めた時に、依怙えこ振舞ふるまいを致しました。」
三右衛門の罪 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
単純な組合せは三人で一人が行司ぎょうじ、数を当てられた児が次の馬になることは普通で、ただ問答の文句とふしとが、土地ごとに少しずつちがっている。
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
西、両国りょうごく、東、小柳こやなぎと呼ぶ呼出しやっこから行司ぎょうじまでを皆一人で勤め、それから西東の相撲の手を代り代りに使い分け、はて真裸体まっぱだかのままでズドンとどろの上にころがる。
伝通院 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
中に一人の年よりたる行司ぎょうじのしはぶきして小声にていふやう、皆の衆静かにせよ、彼こそはかしこの山のいただきに住めるといふ天狗様にこそはあるらめ、今宵こよいの振舞を見るにただびととは覚えず
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
しかし相撲すもうを見ても東西のいずれが勝ったのかはなはだ不明なる場合がある。数万の眼で見る勝負さえもかくのごとくである。また多年審判の任に当たれる行司ぎょうじさえも判定を下すに苦しむことがある。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
わたくしはしまったと思いました。が、そう思う心の裏には、いや、行司ぎょうじは誤っては居らぬ、誤ってると思うのは数馬に依怙えこのあるためだぞとささやくものがあるのでございまする。………
三右衛門の罪 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
はじめにさるとうさぎがんで、鹿しか行司ぎょうじになりました。
金太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
御指南番ごしなんばん山本小左衛門殿やまもとこざえもんどのの道場に納会のうかいの試合がございました。その節わたくしは小左衛門殿の代りに行司ぎょうじの役を勤めました。もっとも目録もくろく以下のものの勝負だけを見届けたのでございまする。
三右衛門の罪 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)