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蝕
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むし
ふりがな文庫
“
蝕
(
むし
)” の例文
ヘタヘタと
崩折
(
くづを
)
れたところを見ると、長い間の不養生に
蝕
(
むし
)
ばまれて、此女の肉體は見る蔭もない哀れなものです。
銭形平次捕物控:169 櫛の文字
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
いつの間にやら殆ど全部
蝕
(
むし
)
ばまれて、それに
黄褐色
(
おうかっしょく
)
のきたならしい
斑点
(
はんてん
)
がどっさり出来てしまっていることに、その朝、私は始めて気がついたのだった。
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
それは効きめの緩慢な毒が血管を伝わって徐々に組織を侵すように、じりじりとごく僅かずつ、時間の経過につれてひろがり、
蝕
(
むし
)
ばみ、深く傷つけていった。
つばくろ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
私は
仔細
(
しさい
)
あってただ一度、この一件書類を読んで見たことがあるが、今はすでにあの偉大なる人間苦の記録も、どこかの
長持
(
ながもち
)
の底で
蝕
(
むし
)
ばみ朽ちつつあるであろう。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
喰い取られたように黒く
蝕
(
むし
)
ばみ、上半分は夕日で黄に染まって、枯木にまで、その一端が照り添って、
目眩
(
まぶ
)
しいように、顔を
反
(
そ
)
むけたかと見えたが、またカッキリと白く
谷より峰へ峰より谷へ
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
▼ もっと見る
一日一日自分の肉体を
蝕
(
むし
)
ばむ業病と相対しながら、ただ手を
束
(
つか
)
ねて無為に過すことの苦しさは、隣りの男とでも話をする機会がなければ発狂するの外はないほどのものである。
癩
(新字新仮名)
/
島木健作
(著)
スポオツでなにも
掴
(
つか
)
み得なかった
悔恨
(
かいこん
)
が、彼の心身を
蝕
(
むし
)
ばんでいるさまがありありと感ぜられ、外では歓呼の声や旗の波のどよめきが
潮
(
うしお
)
のように
響
(
ひび
)
いてくるままに、なにかスポオツマンの
悲哀
(
ひあい
)
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
それを思うとうんざりした。しまいには、落盤にへしゃがれるか、
蝕
(
むし
)
ばまれた樹が倒れるように
坑夫病
(
よろけ
)
で倒れるか、でなければ、親爺のように、ダイナマイトで粉みじんにくだかれてしまうかだ。
土鼠と落盤
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
彼は屋敷の前に近づいて、忍ぶように内を覗くと、軒に張り渡された
注連縄
(
しめなわ
)
が秋風に寂しくゆらいで、見おぼえのある大きい桐の葉が
蝕
(
むし
)
ばんだように枯れて乾いて、折りおりにかさこそと鳴っていた。
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
……黄金の毒気に
蝕
(
むし
)
ばまれた大理石像……
一足お先に
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
篦
(
へら
)
で
捏
(
こ
)
ねたような万年雪の
蝕
(
むし
)
ばみが、鉛色に冷たく光っている、それから遥かに、雪とも水平線ともつかぬうすい線が、銀色に空を一文字に引いている、露営地にいると、わずか二
谷より峰へ峰より谷へ
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
蝕
漢検準1級
部首:⾍
14画
“蝕”を含む語句
腐蝕
虫蝕
侵蝕
日蝕
月蝕
浸蝕
虫蝕本
蝕画
蝕歯
蝕鏤師
蚕蝕
蝕壊
腐蝕土
蠧蝕
部分蝕
酸蝕性
金環蝕
風蝕
虫蝕折
腐蝕期
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