蝋色鞘ろいろざや)” の例文
さっそうとして、蝋色鞘ろいろざやをにぎりとると、飛ばしに飛ばせて早駕籠はやかごを乗りつけたところは、いうまでもなく駒形河岸の二三春の住まいでした。
右門捕物帖:23 幽霊水 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
処へ参ったのは業平文治で、姿なり黒出くろで黄八丈きはちじょうにお納戸献上なんどけんじょうの帯をしめ蝋色鞘ろいろざや脇差わきざしをさし、さらしの手拭を持って、ガラリッと障子を開けますと
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
相手にする値うちもないように、浪人の男は、珊瑚を袱紗ふくさにくるむ、前差まえざしをギッとたばさむ、長い蝋色鞘ろいろざやを左にさげる。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
蝋色鞘ろいろざやをずっしりと落として差してゆうゆうとふところ手をしながら乗り込んでいったは、いわずと知れた金八屋敷です。
と見ると文治郎水色に御定紋染ごじょうもんぞめ帷子かたびら、献上博多の帯をしめ、蝋色鞘ろいろざやの脇差、其の頃流行はやったまさの下駄、さらしの手拭を持って、腰には金革きんかわの胴乱を
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
取りだしたのは藁苞わらづとである、グイとしごいて、苞からむきだされたのは、蝋色鞘ろいろざやなめらかな大小。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ぎろり目を光らしながら、音もなく蝋色鞘ろいろざやを腰にさして、静かにはかまのちりを払っていたとみえたが、すっくと立つや、同時に鋭い声がかかりました。
紺足袋に雪駄穿せったば蝋色鞘ろいろざやの茶柄の大小を落差おとしざしにしてチャラリチャラリとやって参りました、此の武家にお筆が頼み入る処、是が又一つの災難に相成るのお話。
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
日本左衛門は廻廊の端まで出て、蝋色鞘ろいろざやの大刀を板縁に突いて手を置きながら
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
蝋色鞘ろいろざやを長目にずいと落として差して、黙々さっそうとしながら出ていった方角がまたじつに右門流なのです。
蝋色鞘ろいろざや茶柄ちゃつかの刀を右の手に下げたまゝに、亭主に構わずずっと通り上座かみざに座す。
かしら切下きりさげ、無紋の黒着くろぎ、腰から二本の蝋色鞘ろいろざやがヌッとうしろへ立っている。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しゅッしゅッと一本独鈷どっこをしごき直して、ずっしりと蝋色鞘ろいろざやを握りしめると、静かに問いなじりました。
右門は腰をひねって手だれの蝋色鞘ろいろざやをさッと抜いて放つや、そこにはいりきたろうとした陽吉の足もとめがけて、まずきらりとそれなる抜き身をさしつけました。
ゆうゆうとして蝋色鞘ろいろざやを腰にすると、ぱんぱんひざがしらをはたきながら、おちついて帰りじたくを始めましたものでしたから、どこにどう犯人のめぼしがついたものか
すうと立ち上がると、蝋色鞘ろいろざやを落として、差して、早い、早い。声もないが、足も早いのです。
さながら白昼のもとに見るかのごとくぴたりと言い当てましたものでしたから、したたかに肝を冷やして、むくり起き上がりざま、握るともなく蝋色鞘ろいろざやを握りしめていると
黙々として丹念に一枚一枚葉を洗ってしまってから、ゆうゆうと食事をしたため、ゆうゆうと蝋色鞘ろいろざやを腰にすると、不意にずばりとあいきょう者をおどろかせていいました。
例の苦み走った折り紙つきの男まえに、それも前夜月代さかやきをあたらしたばかりなんだから、いっそう水々しくさえまさってみえる男まえに、おなじみの蝋色鞘ろいろざやをおとし差しで
命じておくと、ひと足先に伝六を駕籠で送り出しておきながら、右門は結城袷ゆうきあわせの渋好みづくりに、細身の蝋色鞘ろいろざやをおとし差しにして、ゆうぜんと本石町へやって参りました。
いうまに茶献上をしゅッしゅッとしごきながら、蝋色鞘ろいろざやを意気差しに、はればれとして立ち上がったものでしたから、伝六のことごとく悦に入ったのはいうまでもないことでした。
どてらを小格子双子こごうしふたごの渋い素袷すあわせに召し替えて、きゅっきゅっとてぎわよく一本どっこをしごきながら、例の蝋色鞘ろいろざやを音もなく腰にしたので、伝六はすっかり額をたたいてしまいました。
ここに捕物とりものを重ねること第九回、いまぞはじめて腰の一刀にものをもいわせようというかのように、蝋色鞘ろいろざや細身のわざものにしめりをくれておくと、さっそうとして立ち上がりました。
いいつつ、蝋色鞘ろいろざやを腰にしたとき——、表であわただしくいう声がありました。
慧眼けいがんすでになにものかの見通しでもがついたもののごとく、一本独鈷どっこ越後えちご上布で、例の蝋色鞘ろいろざやを長めにしゅっと落として腰にしながら、におやかな美貌びぼうをたなばた風になぶらせなぶらせ
お公卿さまにてつだわさせた名人は、南部つむぎに浜絽はまろの巻き羽織、蝋色鞘ろいろざやは落としざしで、素足に雪駄せったの男まえは、いつもながらどうしかられても一苦労してみたくなるりりしさでした。
こらえきれぬみがこみあげてきたものか、朱を引いたようなその美しいくちびるに、ほのぼのと微笑をのせていましたが、例の蝋色鞘ろいろざやを音もなく腰にすると、すぐさま立ち向かったところは
ずっしりとあの蝋色鞘ろいろざやを落とし差しにしながら、すぐにも立ち上がるだろうと思われたのに、だが、名人は事の子細を聞き終わると、何を考えたものか、フフン、——というように微笑しながら
蝋色鞘ろいろざやの細いやつを長めに腰へ落として、ひと苦労してみたくなるような江戸まえの男ぶりはすっぽりずきんに包みながら、素足にいきな雪駄せったを鳴らし、まがうかたなく道を柳原の方角へとったので
ぎらりとさやばしらせたものは、あの蝋色鞘ろいろざやの細身なる一刀でした。
蝋色鞘ろいろざやをがっきと腰にして、ののしるごとくに言い放ちました。
みずからの腰の細身の蝋色鞘ろいろざやを抜いて渡して