蛾眉がび)” の例文
春風しゆんぷう珠簾しゆれんを吹いて、銀鉤ぎんこうたうするの処、蛾眉がびの宮人の衣裙いくんを洗ふを見る、月事げつじまた風流ならずや。(四月十六日)
やがてその中から小肥こぶとりの仏蘭西フランス美人のような、天平てんぴょうの娘子のようにおっとりして雄大な、丸い銅と蛾眉がびを描いてやりたい眼と口とがぽっかりと現れて来る。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
さて眺望みわたせば越後はさら也、浅間あさまけふりをはじめ、信濃の連山みな眼下がんか波濤はたうす。千隈ちくま川は白き糸をひき、佐渡は青き盆石ぼんせきをおく。能登の洲崎すさき蛾眉がびをなし、越前の遠山は青黛せいたいをのこせり。
十六年、きんに至りたもう。十七年始めて仏書をたもう。十八年蛾眉がびに登り、十九年えつに入り、海南諸勝に遊び、十一月還りたもう。このとし阿魯台アルタイ反す。二十年永楽帝、阿魯台アルタイを親征す。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
キリツとした顏立に枝からもぎ取つたばかりの桃の實のやうな銀の生毛うぶげ曲線カーブのきつい、可愛らしい唇の反り、蛾眉がび鳳眼ほうがん——といふといかめしくなりますが、さう言つた上品な道具立のうちに
児女の蛾眉がび敢て仙を認めんや
断橋奇聞 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
凍蝶いてちょう蛾眉がび衰へずあはれなり
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
幾多の蛾眉がびを貯ふ。
四百年後の東京 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
はかつたやうにゑくぼを左右へ彫り込んだ下膨しもぶくれのほお。豊かにくくつた朱の唇。そして蛾眉がびの下に黒い瞳がどこを見るともなく煙つてゐる。矢がすりの銘仙に文金ぶんきんの高島田。
(新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
さて眺望みわたせば越後はさら也、浅間あさまけふりをはじめ、信濃の連山みな眼下がんか波濤はたうす。千隈ちくま川は白き糸をひき、佐渡は青き盆石ぼんせきをおく。能登の洲崎すさき蛾眉がびをなし、越前の遠山は青黛せいたいをのこせり。