だこ)” の例文
といっているとき、部屋の中からは、一人の役人が、頭から湯気ゆげを立てて、まるでだこのような真赤な顔で飛び出してきた。
「アハハ。成る程。死んどる死んどる。ウデだこごとなって死んどる。酒で死ぬ奴あどじょうばっかりションガイナと来た」
斜坑 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「畜生! どこで飲んできやがったんだ。やっと金を掴めやア チェッ、だこになって帰ってきやがる……」
反逆 (新字新仮名) / 矢田津世子(著)
すすめ上手に、いつか、法印、すっかり酔わされて、まるでうでだこのようないろになってゆくばかりだ。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
その身嗜みだしなみのために、絶えざる考慮こうりょはらったにちがいない、女性の身体からだが、ゆでだこか何かのように、鉤にるされて、公衆の面前、しかも何等なんらの同情もなく、軽佻けいちょうな好奇心ばかりで
死者を嗤う (新字新仮名) / 菊池寛(著)
大懶獣草メガテリウム・グラスこうしほどの葉や、スパイクのようなとげをつけた大蔦葛つたかずらの密生が、鬱蒼うっそうと天日をへだてる樹葉の辺りまで伸びている。また、その葉陰はかげ倨然きょぜんとわだかまっている、大だこのような巨木の根。
人外魔境:01 有尾人 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
ミミに痛いところを突込まれ、ベランはだこのようになって、ただうなるばかりだった。
宇宙尖兵 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その暗い三坪ばかりの土間に垢光りする木机と腰掛が並んで右側には酒樽桝棚、左の壁の上に釣った棚に煮肴にざかな蒲鉾かまぼこ、するめ、うでだこの類が並んで、あがかまちに型ばかりの帳場格子がある。
骸骨の黒穂 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ドレゴはエミリーを浴室から追い出すと、ゆでだこのように真ッ赤になった身体で立ち上り、タオルで拭うのもそこそこにして服を着かえると、エミリーを自家用車に乗せてはしり出した。
地球発狂事件 (新字新仮名) / 海野十三丘丘十郎(著)
洋紅ようこうで真赤に染めてあるウデだこの顔をながめた。