虹色にじいろ)” の例文
それらのなかには赤だの青だの黄だの紫だのがまじっていて、それらが全体として虹色にじいろになって見えることに気がついた。
恢復期 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
すると、誰しも太陽を見つめる時、むらさき色の半陰影が輪を描くように、彼女はすべて虹色にじいろにかがやいていました。
かみしめたその左の腕から血がぽたぽたとしたたっていた。そのしたたりが腕から離れて宙に飛ぶごとに、虹色にじいろにきらきらとともえを描いて飛びおどった。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
虹色にじいろに染められた霧の気流がくるめく空に、黄昏たそがれと、方角を知るのみで、やがて全軍は、山の見えない山の中に、ただ赤々と、火をいて、夜をかしていた。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すると、その虹色にじいろをした汚れた古硝子ふるガラスのうえの光の乱反射の中に、曾て生あるものとして、または肖像画として彼の眼に触れた、見覚えのある面影が浮かぶのであった。
水色みづいろ薔薇ばらの花、虹色にじいろ薔薇ばらの花、怪獸シメエルの眼に浮ぶあやしい色、水色の薔薇ばらの花、おまへのまぶたを少しおあげ、怪獸シメエルよ、おまへはめんと向つて、ぢつと眼と眼と合せるのがこはいのか、僞善ぎぜんの花よ
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
テーブルの上におきっ放しにしてある灰色(二十五ルーブリ)や虹色にじいろ(百ルーブリ)の紙幣が、またしても目の中でちらついたが、彼女はすばやくそれから顔をそむけて、ルージンを見上げた。
四、五段の船そこ梯子ばしごから上に上半身を出す。とたんに、眼もとをしかめた。まだ海上はいちめんな狭霧さぎりだが、大きな旭日と、波映はえいの揺れに、物みな虹色にじいろに燃えていたのである。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
外の大気は明るく、武者陣の甲冑には、冬陽ふゆび虹色にじいろ陽炎かげろうしていた。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
虹色にじいろが高くのぼってきた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)