虚偽うそ)” の例文
虚偽うそツ、し其れならば、姉さん、貴嬢あなたの苦悶を私に打ち明けて下すつてもいぢやありませんか、秘密は即ち不信用の証拠です」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
... 拵えますが僕はよく知りません。しかし玉子は真誠ほんとの半熟が一番消化も良し、味も良いようです」主人「半熟に真誠ほんと虚偽うそがあるかね」
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
アブサラの国では「虚偽うそ」といふことは一言も許されないのです。たゞ「美」といふ一字だけが在るのみなのです。
嘆きの孔雀 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
医者が三月みつきと宣告したんだから、りきんでも踏反ふんぞり返っても三月経てばゴロゴロッとたん咽喉のどひっからんでのお陀仏様だぶつさま——とこう覚悟して置かにゃ虚偽うそだよ
真実まこと虚偽うそか、本気か冗談か、平気か狂気か、イカサマ師か怪物か、そうして有罪か無罪か判断に苦しむ大胆さ、しかも生前の主人ダメス王の真価値は勿論
鼻の表現 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
虚偽うそでは出来ぬ優しさと、心解けたる助三が『それではきつと、今晩の、十二時を合図にして』
したゆく水 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
お俊と相対さしむかいに成ると、我知らず道徳家めいた口調に成ることを、深くじていた。そして、言うことが何となく虚偽うそらしく自分の耳にも響くことを、心苦しく思っていた。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
正に是れ好色男子得意の処にして、甚しきは妻妾一家に同居し、仮令い表面ウワベ虚偽うそにても其妻が妾を親しみ愛して、妻も子を産み、妾も子を産み、双方の中、至極むつまじなど言う奇談あり。
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
それに、そうした噂がまんざら虚偽うそでないという証拠しょうこも時には眼にもうつった。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
つかっているようだわ。どこか不自然な、虚偽うそなところがあるみたいだわ。
おまへ達は虚偽うそを知らない筈だのに!—
南洋館 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
「僕に言わせると、ここの家の遣方やりかたは丁度あの文晁だ……皆な虚偽うそだ……虚偽の生活くらしだ……」
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
かうして二人が居るところを、人が見たらば、真実まことの恋か、虚偽うその恋かが知れやうに。お前がそれでは曲がない。元木に勝る、うら木なしと、世間でいふのは、ありや嘘かえ。
したゆく水 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
たとへ虚偽うそでも、浮気うはきでも
“MONICO” (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
丁度小父さんの家がまだ京橋の方にあった時分田舎いなかから出て来たばかりの彼は木登りが恋しくて人の見ない土蔵の階梯はしごだんを逆さに登って行くことを発明したが、そんな風にある虚偽うそを発明した。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
気乗のしない虚偽うその表情と
南洋館 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
『どうしても言はないのは虚偽うそだ。』
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)