うてな)” の例文
うてな傾けて舟を通したるあとには、かろく波足と共にしばらく揺れて花の姿は常のしずけさに帰る。押し分けられた葉の再び浮き上る表には、時ならぬ露が珠を走らす。
薤露行 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ふといたまど横向よこむきにつて、ほつれ白々しろ/″\としたゆびくと、あのはなつよかをつた、とおもふとみどり黒髮くろかみに、おなしろはな小枝こえだきたるうてな湧立わきたしべゆるがして、びんづらしてたのである。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
抱かれて吾が児がさやる梅の花うてなあかしその枝のさきに
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
わが打掛の花のうてなのもなかより
きしむるはなうてな
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
うてなにぬれる蘂の粉が
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)