すみれ)” の例文
すみれ茅花つばなの時分から、苗代、青田、豆の花、蜻蛉とんぼ、蛍、何でも田圃がすきで、殊に二百十日前後は、稲穂の波に、案山子かかしの船頭。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
廂髪ひさしがみすみれ色のはかまをはいた女学生もある。校内からは、ピアノの音がゆるやかに聞こえた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
姪はまた姪で、お房やお菊のよく歌った「紫におうすみれの花よ」という唱歌を歌い出す。
芽生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
すみれだの蒲公英たんぽぽだのよりも、その他の何よりも、菜の花に執着を持つ、少年の時代から、この花が好きで、野外遠足は、菜の花の多そうなところを選んで歩いたものだ、今でも春の景色と云うと
菜の花 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
量目はかりめ約百万両。閻浮檀金えんぶだごん十斤也。緞子どんす縮緬ちりめんあやにしき牡丹ぼたん芍薬しゃくやく、菊の花、黄金色こんじきすみれ銀覆輪ぎんぷくりんの、月草、露草。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
高嶺たかねの霞に咲くという、金色こんじきすみれの野を、天上はるかに仰いだ風情。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)