荷梱にごり)” の例文
厳しい荷梱にごり岩乗がんじょうな箱を結いつけて——駅路の鈴も物々しく、蜿蜒えんえんたる人馬の列をして、この大商隊は、都入りするのだった。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
家臣たちは事実もう明早暁の出発に、何かと荷梱にごりをまとめているのに、訪客がたえないため、片づかないで困っているのだ。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それに遅れまいと、障子の外、廻廊の彼方かなたなどを、あわただしく家臣たちの跫音が往来している。荷梱にごりなど運び出している。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
甚内は先に立ち、段々畑の下の長屋裏へともなった。そして蓄備倉のような洞穴のおくを示した。荷梱にごりにして数個、冊数にすれば千巻の書物ともいえる。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
荷梱にごりは馬の背に、弓道具は扈従こじゅうの手や肩に、そして先発から供の末まで、門外に出て、すでに隊伍を立てていた。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大阪表へお立退たちのきになるんで、家財諸道具が荷梱にごりで七十箇、箱とこもで二十余り、それを今夜のうちに船積みしろという無理な註文じゃございませんか。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
北京ほっけいから東京への道すじを、例の時価十万貫の生辰綱しょうしんこう(誕生祝いの荷梱にごり)が行くとすれば、その通路は、どの辺に当るか? 去年と道すじを変えるか否か?
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
角な荷梱にごり十箇。それには、大名府の役署に命じて、十りょう太平車うしぐるまを出させる。また軍兵のほか、軍部から力者十人を選ばせて、一輛一人ずつを配して付ける。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そんな話声に背を向けて、先刻さっきから荷梱にごりりかかって居眠っている百姓娘があった。草鞋ばきでもんぺを穿き、無造作に束ねた髪へ、わらごみがたかっている。
篝火の女 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
武器、装束、その他の討入道具の包まれている荷梱にごりや、箱や藁包わらづつみが、裏の庭先で解かれていた。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
見ると、軒下の手押し車に、小さい荷梱にごりや食器かごやボロを包んだ一世帯が、積んである。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「敵はこの宵から荷駄荷梱にごりをくくり始め、どうやら彼処かしこの地をうごく気配にうかがわれます」
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
明日、御大将には、にわかに、御帰国のお旨、仰せ出された。故に、ただいまより匆々そうそうに、荷梱にごりを仕舞い、荷駄にくくし付けられい。火急なれば、亥の下刻前に御発向仰せ出さるるも計り難い。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)