芳紀とし)” の例文
芳紀としの数とややひとしい、二十五番の上客である。しがみ着いてりかかった、机の下で、前褄を合せながら、膝を浮して此方こなたを見向き
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
芳紀としのほども、美しさに過ぎて、幾つぐらいとも計りがたいが、蘭瞼細腰らんけんさいよううすものすがたは、むしろ天女に近いと云ってもいい。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「懐疑は悲観のなりサ、彼女かれ芳紀とし既に二十二—三、いま出頭しゆつとうてん無しなのだ、御所望とあらば、僕いさゝか君の為めに月下氷人げつかひようじんたらんか、ハヽヽヽヽヽ」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
否、われははや年多くとりたり。この時傍聽かたへぎきしたりしわれ、おん身の芳紀としいくばくぞと問ひぬ。
それを芳紀としも若くッてかつ婦人の身でいながら稽古してお出でなさる、感心な者だ。だからこの近辺じゃアこう言やア失敬のようだけれども、とびたかとはあの事だと言ッて評判していますゼ。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
貂蝉は、芳紀とし十八、その天性の麗わしさは、この後園の芙蓉の花でも、桃李とうりの色香でも、彼女の美には競えなかった。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
芳紀とし正に二八にはちながら、男女おとこおんな雌雄めおの浪、権兵衛も七蔵も、頼朝も為朝も、立烏帽子たてえぼしというものも、そこらのいわおの名と覚えて、崖に生えぬきの色気なし、なりにもふりにも構わばこそ。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)