艤装ぎそう)” の例文
旧字:艤裝
オリオン号は造船工廠こうしょうの近くに停泊していた。そしてなお艤装ぎそうしたまま修繕されていた。船体は右舷では少しも損んでいなかった。
ちゃちな艤装ぎそうのために、鉄材と扉の間にすきが出来、厚さ三四センチのうすい板の柱のように間につめこんであったのだ。
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
あたりがとっぷり暮れ、私がやっとそこを立ち上がったとき、私はあたりにまだ光があったときとはまったく異った感情で私自身を艤装ぎそうしていた。
冬の蠅 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
かれ等はもう、すっかり艤装ぎそうを終って、造船工場の手を離れ、呉にも、神戸にも、横須賀にも、長崎にもいないのだ。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
四月末であり、舟艇しゅうてい、戦艦、すべて軍船の艤装ぎそうをした大小五百余そうの船影は、その日、府中豊浦とよらの海を出て行った。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
当時の技術をもってして鉄造船の場合船体および艤装ぎそうを合わせて重量は排水トン数の三十パーセントで済んだが、木造船の場合は四十パーセントだった。
黒船前後 (新字新仮名) / 服部之総(著)
すると暴風雨数日ののち、たった二人だけ生き残って絶海に漂流する事又十数日、ついに或る天気晴朗な払暁あけがたに到って、遥か東の方の水平線上に美々しく艤装ぎそうした大船が
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
なおそのほかに探険船シビリアコフ号を艤装ぎそうして途中でいろいろの観測研究をすると同時にただひと夏に北氷洋を乗り切るという最初のレコードを作ろうという計画を立て
北氷洋の氷の割れる音 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
日本海軍の起源きげんは、安政初年のころより長崎にて阿蘭人オランダじんつたうるところにして、伝習でんしゅうおよそ六七年、学生の伎倆ぎりょうほぼじゅくしたるにき、幕議ばくぎ遠洋えんようの渡航をこころみんとて軍艦ぐんかん咸臨丸かんりんまる艤装ぎそう
比律賓フィリッピン総督ドミンゴ・ザルバルブル・ルシェベルリはシドチの為人ひととなりを知つていたく敬服の念を懐いたが、その金鉄の宿志をきいて深く憐れみ、一切の費用を負担して一艘の大船を艤装ぎそう
艤装ぎそういかめしく、大鉄砲の銃座もすえてあるし、長柄ながえや、鈎槍かぎやりなども、ふなべりに立てならべてあった。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その後で、さらに飾りつけそのほかの艤装ぎそうがついて完成するのであった。
浮かぶ飛行島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
左門の心は内外ともに柔らかな肉づきによつて造られてゐたが、野々宮の一見女性的な弱々しさはむしろ内部に金属の艤装ぎそうをほどこし、人の好意や温かさを冷然と弾き返す強いものがあるのである。