自動車くるま)” の例文
ええ、それが、なんしろ、重役の自動車くるまですから、其処そこで止まったと思うと、直ぐに私は飛出して、遮断機を上げ掛けたんです。
白妖 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
たなしまで来ると、赤土へ自動車くるまがこね上って、雨のざんざ降りの漠々とした櫟の小道に、自動車くるまはピッタリ止ってしまった。
放浪記(初出) (新字新仮名) / 林芙美子(著)
自動車くるまの上から町を見てゆくうち、百足屋(むかでや)といふ看板の出てゐるのが眼にとまり、何を賣る店であらうと思うた。
京洛日記 (旧字旧仮名) / 室生犀星(著)
勿論私は、飽く迄も尾行する決心だったので、間髪を容れず同じく自動車に乗り込みあの前の自動車くるまを追え、と運転手に命じたのであります。
陳情書 (新字新仮名) / 西尾正(著)
「鬼塚元帥が、たいへんお待ちです。どうぞ、お早くこの自動車くるまへ……。申しおくれましたが、わたしは、鬼塚元帥の秘書のマリ子でございます」
地球要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)
旅館では河豚を出さぬ習慣だから、客はわざわざ料亭まで足を運ぶ、その三町もない道を贅沢な自動車くるまだった。ピリケンの横丁へ折れて行った。
雪の夜 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
そのお地面の前には氷のような谷川の水がドンドン流れておりますが、その向うが三間幅の県道なんで橋をおけになればお宅のお自動車くるまが楽に這入ります。
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
まして、われ/\の乗つた、ついとほりの自動車くるまをや、……しかし、われ/\は、ちッともそんな驚いた風はみせず、微笑をさへ示しつゝ、山門をくゞつた。
にはかへんろ記 (新字旧仮名) / 久保田万太郎(著)
「さう! ぢや、自動車くるまで行つて来てはどう。自動車を降りてから、三十間も歩けばいゝのですもの。」
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
待たせてあった自動車くるまへ忙しげに片足をかけ、母はちょっと思いなおした様子で紀久子を呼んだ。
(新字新仮名) / 矢田津世子(著)
そいつを、むりに自動車くるまにのっけるもんだから……。意趣晴らしだ、一杯のまして下さい。
とカポネは、エールを自動車に乗せた、う、「自動車くるまに乗せた」のである。そうして、「くるまに乗せる」ということは、郊外におびき出して、殺すということなのである。
世界の裏 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
と、自動車くるまの運転手は、前の硝子ガラスから、行く手の空をのぞいて言った。
遠藤(岩野)清子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
玄関で、自動車くるまを下りた途端に、四辺を見廻しながら
富士屋ホテル (新字新仮名) / 古川緑波(著)
鳥渡来て自動車くるまを押し上げて呉れと言うんです。
双面獣 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
処へ自動車くるまが見つかった。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「一台も自動車くるまには行き逢わなかったね。……もうあのクーペ、いま頃は関所止めになって、箱根口でうろうろしているだろう」
白妖 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
「そう! じゃ、自動車くるまで行って来てはどう。自動車を降りてから、三十間も歩けばいゝのですもの。」
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
自動車くるまはうす雪のけはひを見せた嵐山の下を通るころ、そとは全く暗くなつてしまつた。
京洛日記 (旧字旧仮名) / 室生犀星(著)
便利なことに摩周の湖までハイヤが通ると云ふことで、私達は自動車くるまで山へむかつた。
坂田は不景気な顔で何やらぽそぽそ呟いてゐたが、自動車くるまが急にカーヴした拍子に
聴雨 (新字旧仮名) / 織田作之助(著)
「後の自動車くるまは大丈夫かね」
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
して「あたくしは、いま劇場の昼の部と夜の部との間で、丁度身体が明いているのよ。一日中であたくしはそのときがいちばん楽しいの。……で、ドライヴしていたんですわ、ホラごらん遊ばせ、ここから見えるでしょう、あたくしの自動車くるまが……」
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
退屈が自動車くるまの中から飛び去った。速度計は最高の数字を表わし、放熱器ラジエーターからは、小さな雲のような湯気がスッスッと洩れては千切れ飛んだ。
白妖 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
後ろから送つて出て來たさち子は私共がくるまに乘る所まで蹤いて來て、その間ぢゆう自動車くるまが來ると右側に立つてくるまを私から避ける位置に、自分ですすんで立つことも覺えてゐた。
巷の子 (旧字旧仮名) / 室生犀星(著)
ざんざ降りの雨の中を、私を乗せた自動車くるまは八王子街道を走っている。
放浪記(初出) (新字新仮名) / 林芙美子(著)
そして間もなく二人は、可哀想な豚を引摺る様にして、自動車くるまの待たしてある方角へ松林の中を歩き出しました。
とむらい機関車 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
峽のまちを吾が自動車くるま
大島行 (旧字旧仮名) / 林芙美子(著)
それから役等はB町へ出掛けて安藤巡査に豚の処置を依頼すると、そのまま自動車くるまで、もうすっかり明け放れたすがすがしい朝の郊外を、H駅まではしる事になったんです。
とむらい機関車 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
何処どこをどうはしったのか吉岡には一向に判りませんでしたが、とにかく半時間近くも闇の中を飛ばし続けた片山助役は、と或る野原で自動車を降りると、自動車くるまは其処へ待たして置いて
とむらい機関車 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)