胡蘿蔔にんじん)” の例文
丹「それなら何も心配は入りません、一箱で一両も二両もする訳のものじゃアございやせん、多寡たかの知れた胡蘿蔔にんじんぐらいを」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それに君如何どうだ、細君は殆んど僕等の喰ひあましの胡蘿蔔にんじん牛蒡ごぼうにもありつかずに平素しよつちう漬物ばかりをかぢつてる、一片ひときれだつて亭主の分前わけまへに預つたことはないよ。
一家 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
中にもコスモスは、胡蘿蔔にんじんのような葉がちぢれて、せた幹がひょろひょろして立っているのである。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
併し間もなく気が附いて思つた。此土地ではニコラウスの夜に、子供が小さい驢馬を拵へて、それにまぐさだと云つて枯草や胡蘿蔔にんじんを添へて、炉の下に置くことになつてゐる。
女は一般に南瓜かぼちゃ薩摩芋さつまいも胡蘿蔔にんじんなどを好む。男は特にこれを嫌ふといふ者も沢山ないにしてもとにかく女ほどに好まぬ者が多い。これは如何なる原因に基くであらうか。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
「あれが、一本でも売れたら、胡蘿蔔にんじんを三銭買ってやるけに、たのしみにして待っていろよ」
キャラコさん:10 馬と老人 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
胡蘿蔔にんじんを繊に松葉をさしても、形は似ます。指で挟んだ唐辛子でも構わない。——
縷紅新草 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
中部地方では二月涅槃ねはんの日にヤセウマという長い団子をこしらえ、または同じ月にオネヂと謂うものを作る日もあったが、是も後にはねじり団子には限らず、かぶ胡蘿蔔にんじん等の野菜類まで
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
余の郷里にては饂飩うどん椎茸しいたけせり胡蘿蔔にんじん、焼あなご、くずし(蒲鉾かまぼこ)など入れたるをシツポクといふ。これも支那伝来の意であらう。めん類は総て支那から来たものと見えて皆漢音を用ゐて居る。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)