繋留けいりゅう)” の例文
そこで彼は、十七号を東の浜までいていってもらい、現在の位置に繋留けいりゅうしたうえ、そこで自分ひとりの隠退生活を始めたのである。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
それまでのところは、彼は地上員が多忙たぼうの中を駈けつけて、彼のために繋留けいりゅう気球第一号の綱をゆるめてくれたものとばかり考えていた。
空中漂流一週間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その裏の大きな溝に、私は或る日、どこの家の所有だか分からない、古い一艘いっそうの小舟が繋留けいりゅうせられずにあるのを見出した。
幼年時代 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
水番小舎ごやの付近に繋留けいりゅうされた小舟四隻に分乗して、湖心にぎ出しましたが、湖底へ碇綱いかりづなを下ろす必要も何もありません。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
飛行機から爆弾を投下する光景や繋留けいりゅう気球が燃え落ちる場面があるというので自分の目下の研究の参考までにと見に行ったのが「ウィング」であった。
映画時代 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
この辺一体にや蘆の古根が多く、密林の感じである。材木繋留けいりゅうの太い古杭がちてはうち代えられたものが五六本太古の石柱のように朦朧と見える。
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
飛行船型の風船が、丸屋根の空高く、繋留けいりゅうされ、その大きな胴中に「菊花大会」の四文字が、どんな遠くからでも見えるように、黒く染め出してあるのだ。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
四時の定刻に繋留けいりゅうしないと競漕からオミットされるからである。土堤では観衆が一種の尊敬と好奇の念をもってこの樺色の衣服を着た選手たちに道をあけた。
競漕 (新字新仮名) / 久米正雄(著)
「ええ、下に降ろして繋留けいりゅうして置くのが普通ですが、天候を油断してそのままにして置く時もあるのです」
デパートの絞刑吏 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
すっかり追い詰められて手も足も出なくなっている二人は、昨夜窮余きゅうよの一策で大胆にも繋留けいりゅうちゅうの河船を襲い、拳銃ピストルで番人を脅迫して食糧を奪い去ったというのである。
チャアリイは何処にいる (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
警官もやむをえず、そのまま繋留けいりゅうしておくと、翌朝になって、唖は大変腹が減って来た。
文芸の哲学的基礎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
桟橋に繋留けいりゅうされた、目的の貨物船ははげしい風の中に、さかんに黒烟こくえんをあげていた。
秘境の日輪旗 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
そこで彼は、十七号を東の浜までいていってもらい、現在の位置に繋留けいりゅうしたうえ、そこで自分ひとりの隠退生活を始めたのである。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
太刀川は、朝九時、一般乗客にうちまじり、埠頭からモーター・ボートにのって、飛行艇の繋留けいりゅうされているところへ急いだ。
太平洋魔城 (新字新仮名) / 海野十三(著)
飛行船形の軽気球は、楽園の一隅、とある小山の上に繋留けいりゅうしてあった。
地獄風景 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
その「火の玉」少尉は、その夜の九時、帝都北東地区の○○陣地において、繋留けいりゅう気球に乗りこんだ。
空中漂流一週間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
彼はゴンドラのふちにしがみついたまま、一本の綱から他の綱へと、後を追っていった。その結果、気球を繋留けいりゅうしていた六本の綱がことごとく切断されていることを発見したのである。
空中漂流一週間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
繋留けいりゅう索は、はじめはとても本艇からはなすことができないほど強いもので、それをたち切ることをだんねんしていたが、テッド隊長はガンマ和尚がいったことばに希望を持ち
怪星ガン (新字新仮名) / 海野十三(著)
艦内では、いよいよ繋留けいりゅう用意の号令が出て、係の兵員は眼のまわるような忙しさだ。
浮かぶ飛行島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そのとき、竹見がふと気がついたのは、平靖号の船腹に、一隻のボートが、大きくゆれながら、繋留けいりゅうしていることだった。そのボートには、不似合いな大きなはたが、はためいていた。
火薬船 (新字新仮名) / 海野十三(著)