ひも)” の例文
天の香山の小竹葉ささば手草たぐさに結ひて一八、天の石屋戸いはやど覆槽うけ伏せて一九蹈みとどろこし、神懸かむがかりして、胷乳むなちを掛き出で、ひもほとに押し垂りき。
「おや、しまった」と、こんどはお手をつかみますと、そのお手の玉飾りのひももぷつりと切れたので、なんなくお手をすりいておげになりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
その清いまゆにも涼しい目もとにも老いの迫ったという痕跡こんせきがなく、まだみずみずしい髪のもとどりを古代紫のひも茶筅風ちゃせんふうに結び、その先を前額の方になでつけたところは
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
激戦の後と見え、ひももゆるんだのか兜もあみだになり、鎧の左袖を春風になびかせ、白旗をさっと押し立てて、砂煙黒く蹴立てて飛ばしてくる。成忠はもう生きた心地もしなかった。
と答えて客はそこに腰を掛け脚絆きゃはんひもを解きにかかった。
忘れえぬ人々 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「おぐしをつかめばお髪がはなれ、玉のひももお召物めしものも、みんなぷすぷす切れて、とうとうおとりにがし申しました」とお聞きになりますと、それはそれはたいそうおくやみになりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
そのお毛をそのままそっとおかぶりになり、それからお腕先うでさきのお玉飾たまかざりも、わざと、つなぎのひもくさらして、お腕へ三重みえにお巻きつけになり、お召物めしものもわざわざ酒で腐らしたのをおめしになって
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)