緊乎しっかり)” の例文
桂木ははじき飛ばされたやうに一けんばかり、むしろ彼方あなたへ飛び起きたが、片手に緊乎しっかりと美人を抱いたから、寝るうちも放さなかつた銃を取るにいとまあらず。
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
犬は尾をって行こうとしたが、お葉は相変らず緊乎しっかり抱いていた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
両膝を緊乎しっかりゆわえている由紀を、板の間に抱いたまま、手を離そうにも、かぶりをふり、頭をって、目を結えたのをはずしませんから、見くびって、したたかくい込んでいた蚊の奴が
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「むむ、上の岩に緊乎しっかり結び付けてある。」
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
台場だいば停車場ステエションから半道はんみちばかり、今朝けさこの原へかゝつた時は、脚絆きゃはんひも緊乎しっかりと、草鞋わらじもさツ/\と新しい踏心地ふみごこち、一面に霧のかゝつたのも、味方の狼煙のろしのやうにいさましく踏込ふみこむと、さあ、ひとひと
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
かおりの高い薬を噛んで口移しに含められて、膝に抱かれたから、一生懸命に緊乎しっかりすがり着くと、背中へ廻った手が空をでるようで、娘は空蝉うつせみからかと見えて、たった二晩がほどに、糸のようにせたです。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)