粉煙草こなたばこ)” の例文
おお足が痛え! 取つてくんなつたら、そこんとこにあらあな、聖像の下んとこによ。だが気い附けろよ、粉煙草こなたばこの入えつた壺をひつくら返さねえやうに。
江戸開府以來と言はれた、捕物の名人錢形平次は、粉煙草こなたばこの煙りを輪に吹きながら、いとも寛々たる態度で、飛び込んで來た子分の八五郎に、かう浴びせるのでした。
一夜づくりの曲独楽きょくごまの太夫が、とにかく明日から見物にお目見得というので、永らくシケを食って粉煙草こなたばこにさえかわいていた一座の者ども、さあ、これで一つ大入りを取ってと
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、爺さんは、粉煙草こなたばこを、三度ばかりに火皿の大きなのにつまみ入れた。
灯明之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かぶっていた桐油とうゆを、見世みせすみへかなぐりてて、ふところから取出とりだした鉈豆煙管なたまめぎせるへ、かます粉煙草こなたばこ器用きようめたまつろうは、にゅッと煙草盆たばこぼんばしながら、ニヤリとわらって暖簾口のれんぐち見詰みつめた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
睦田巡査はポケットから鉈豆煙管なたまめぎせるを出して粉煙草こなたばこを一服吸い付けた。
老巡査 (新字新仮名) / 夢野久作(著)