窮鳥きゅうちょう)” の例文
「いや、彼はたのむ所がなくて、わがふところに投じてきた窮鳥きゅうちょうだ。それを殺すは、飼禽かいどりくびるようなもの。玄徳こそ、義のない人間といわれよう」
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
要らぬ匿い立てとは何を申すか! よしんば当院に逃げ込んだがまことであろうと、窮鳥きゅうちょうふところに入る時は猟夫りょうふもこれを殺さずと申す位じゃ。
野蛮人社会に聖人君子を気取っているほど損なことはない。私は国分を撲って、初めて存在を認められた。級長も腕力がないと勢力がない。実際窮鳥きゅうちょうだった。
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
窮鳥きゅうちょうふところに入れば猟師もこれを殺さず——そんなむずかしい言葉は知らないが、お妙の言ったそんなような意味のことが、ハッタと壁辰の十手を叩き落としたのだ。そうだ。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
窮鳥きゅうちょうふところに入れば猟夫りょうふもこれを殺さぬ。怖気おじけたり臆病おくびょうな人も、他に信じてかかればおそるることがなくなる。僕はこの一時の経験により、自分の心理状態に一大改革をたように思う。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
康頼 窮鳥きゅうちょうがふところに入る時は猟師りょうしもこれを殺さないと申しますが。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
懐中ふところへ入って来た窮鳥きゅうちょうにたいして、山田八蔵が何を語らったか。彼と大賀弥四郎との関係を考えあわせれば、あえて詮索せんさくするまでにも及ばない。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ちとそれだけの言いわけでは、そちの風体と言い、面構つらがまえと言い、主水之介あまりぞっとしないが、窮鳥きゅうちょうふところに入らば猟師も何とやらじゃ。では、いかにも匿まってつかわそうぞ。安心せい」
窮鳥きゅうちょうふところに入る時は猟師も之を殺さず」
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
それは呂布が意識して徐州にほどこした徳ではないが、わしは天佑てんゆうに感謝する。——今日、呂布が窮鳥きゅうちょうとなって、予に仁愛を乞うのも、天の配剤かと思える。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「返辞はない。ふところにはいった窮鳥きゅうちょうをむごい猟師りょうしの手にわたすわけにはゆかぬ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
窮鳥きゅうちょう梁山泊りょうざぱくに入って、果然かぜん、ついに泊軍はくぐんの動きとなる事
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
地下室の窮鳥きゅうちょうに、再生の銅鈴どうれいが友情を告げて鳴ること
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
窮鳥きゅうちょう
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)