くぼ)” の例文
まが方士はうしひげである藻草もぐさした、深淵の底に眠つてゐられる、忘却ばうきやくの花は、その眼のくぼつらぬいて咲いてゐる。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
いつかしきアツシシ、マキリ持ち、研ぎ、あぐらゐ、よるなす眼のくぼのアイヌ、今は善し、オンコ削ると、息長おきなが息吹いぶき沈み、れ遊び、心足らふと、そのオンコ、たらりたらりと削りけるかも。
(新字旧仮名) / 北原白秋(著)
その前屈みのからだつき、じっと一点に凝らした眸、蒼白い汗ばんだ顔、落ちくぼんだこめかみ、噛みらした爪、スリッパの踵の方が垂れ落ちて、靴下の不細工な繕いの跡を見せているあたりまで
決闘 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
にこそそのかんばせは、爛々たるしろがねまなこならび、まなじりに紫のくま暗く、頬骨のこけたおとがい蒼味がかり、浅葱にくぼんだ唇裂けて、鉄漿かね着けた口、柘榴ざくろの舌、耳の根には針のごとききばんでいたのである。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
真夜なすくぼのアイヌ
海豹と雲 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)