窓框まどわく)” の例文
そして次の瞬間、引込んだ老人の影を追ふやうに、窓框まどわくに手を掛けた平次の身體が、輕々と窓にね上がつて、老人の部屋へ飛込んでゐたのです。
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
「おいいつけで、外から窓框まどわくき掃除をしておりやしたが、何か、えらいこッても持ち上がったんでございますか」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
真っすぐな白く削られた間柱まばしらや新しくかんなをかけられた扉や窓框まどわくは、特に朝、木材が露にうるおっているときには、清潔で風通しが良さそうな外観をあたえ
もし無我夢中の裡に窓框まどわくに片手を掛けなかったなら、あるいは、そのうちに矢筈がしなやじりが抜けるかして、結局直下三丈の地上で粉砕されたかもしれなかったのである。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
彼は一つ一つの踊り場に立ち止まって、もの珍しげにあたりを見回した。一階目の踊り場では、窓框まどわくがすっかり取りはずしてあった。『あの時はこんな事はなかった』と彼は考えた。
「こんどは窓框まどわくと窓の戸との隙間と、それから壁のふすまの隙間に、紙をはるんだよ」
空襲警報 (新字新仮名) / 海野十三(著)
眼の前の建築群と建築群との狭い間から斜の光線にすくい上げられ花園のスカートを着けた賭博場の白い建物や、大西洋の水面の切端の遠望が、小田島の向うホテル五階の窓框まどわくの高さに止る。
ドーヴィル物語 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
広いチャペルの左右には幾つかの長方形の窓框まどわく按排あんばいして、更に太い線にまとめた大きな窓がある。その一方の摺硝子すりガラスは白く午後の日に光って、いかにも岡の上にある夏期学校の思をさせた。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「引窓の戸はこれだけしか開きませんよ、精々六寸くらゐですね。それに窓框まどわくに釘が出てゐるのは驚いたなア」
何の気もなく爪先立つまさきだちになり、上の窓框まどわくへ手をかけると、不意に! 窓の隙からその手をグイとつかみ取りに引き込まれて、格子こうしからみつけるように、強くじつけられてしまった。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そればかりでは無い。窓框まどわくの内側は、ほんの少しではあったが血が付いて居た筈だ、それに、庭には足跡も無いのに、淡い雪の上に、双刃の短刀が突っ立って居た、——真っ直ぐに、大地に二三寸も突っ立って居たのだ、上からほうったことは疑もない」
笑う悪魔 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)