窓側まどぎは)” の例文
老人のうしろに立つてゐて、お付合のやうに笑ひながら窓側まどぎはの柱に懸つてゐる時計を眺め、更に大形の懐中時計を衣嚢かくしから出して見た。
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
ふと相手に気がついて見ると、恵蓮はいつか窓側まどぎはに行つて、丁度明いてゐた硝子窓ガラスまどから、寂しい往来を眺めてゐるのです。
アグニの神 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
宗助そうすけなん工夫くふうかずに、ちながら、むかふの窓側まどぎはゑてあるかゞみうらはすながめた。すると角度かくど具合ぐあひで、其所そこ御米およね襟元えりもとから片頬かたほゝうつつてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
『又来るよ。』と云ひ捨てた儘、彼は窓側まどぎはを離れて、「主婦おかみはもう大丈夫寝たナ。」と思ひ乍ら家路へ歩き出した。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
と、男は強い弾機ばねに弾かれた様に、五六歩窓側まどぎはを飛び退すさつた。「呀ツ」と云ふ女の声が聞えて、間もなく火光がパツと消えた。窓を開けようとして、戸外そとの足音に驚いたものらしい。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
少し行くと、右側のトある家の窓に火光あかりがさして居る。渠は其窓側まどぎはへ寄つて、コツコツと硝子を叩いた、白い窓掛カーテンに手の影が映つて半分許り曳かれると、窓の下の炬燵こたつに三十五六の蒼白い女が居る。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)