となえ)” の例文
旧字:
大納言のつかさは「天下喉舌こうぜつノ官」ともいわれるきょくである。聖旨を下達し、下の善言もれる機関とあるのでそんなとなえもあったとみえる。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここに何ともいえない大胆な意外な不調和を見せている処に、いわゆる雅致ととなえる極めてパラドックサルな美感の満足を感じて止まなかったからである。
妾宅 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
恐れ尊めるよりのとなえなれば、おもうに我邦のむかし山里の民どものいたく狼を怖れ尊める習慣ならわしの、漸くその故を失ないながら山深きここらにのみ今にのこれるにはあらずや。
知々夫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
姫百合ひめゆり姫萩ひめはぎ姫紫苑ひめしおん姫菊ひめぎくろうたけたとなえに対して、スズメの名のつく一列の雑草の中に、このごんごんごまを、私はひそかに「スズメの蝋燭ろうそく」と称して、内々贔屓ひいきでいる。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これらどうやら上古蛇を草野かやのの主とし、野槌と尊んだとなえからあやまでた俗伝らしい。
この鴎外漁史と云うとなえは、予の久しく自ら署したことのないところのものである。
鴎外漁史とは誰ぞ (新字新仮名) / 森鴎外(著)
摂津国屋藤次郎のとなえは二代続いているのである。
細木香以 (新字新仮名) / 森鴎外(著)