秩父ちゝぶ)” の例文
お前の阿父おつとさんは此の秩父ちゝぶの百姓を助けると云ふので鉄砲にたれたのだが、お前の量見は其れよりも大きいので、如何どんな災難がいて来ようも知れないよ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
たゞせば秩父ちゝぶ山中で育つた娘で、親は獵師だつたさうですよ——親の因果いんぐわが子にむくいといふぢやありませんか
「ですが、あなたの方には日高秩父ちゝぶさんといふ立派な書家がいらつしやるぢやありませんか。」
くま本州ほんしゆうやまさんするものは、アジア大陸たいりくさんする黒熊くろぐま變種へんしゆです。秩父ちゝぶやま駿河するが甲斐かひ信濃しなの相模さがみ越中えつちゆう越後等えちごなど山中さんちゆうにをり、ややまぶどうをこのんでべてゐます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
○「あ彼方あっちへ逃げて……それから秩父ちゝぶへ出たんで」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
秩父ちゝぶ遠山とほやま筑波山つくばやま
全都覚醒賦 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
私自身を言うて見ても、秩父ちゝぶ暴動と云ふことは、明治の舞台を飾る小さき花輪になつて居るけれ共、其犠牲になつた無名氏の一人の遺児かたみが、父母より譲受ゆづりうけた手と足とを力に
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
「主人の三七とたつた二人でこの部屋に殘つて居た者、——秩父ちゝぶ山中に育つた獵師の娘」
秩父ちゝぶの雪の山颪やまおろし、身を切るばかりにして、戸々こゝに燃ゆる夕食ゆふげ火影ほかげのみぞ、慕はるゝ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
爺やの熊吉は秩父ちゝぶの奧から出て來た、山男のやうな親爺です。
「もう一人、江島屋の下男の幹助みきすけ、あれは好い男ですね。色が赤黒くて、恐ろしく達者で、秩父ちゝぶ山中から生捕つて來た熊の子見てえな野郎ですが、無口で無愛想で、お孃さんのお艶に白い齒も見せないのは、あの男ばかりですよ」