祖母としより)” の例文
祖母としよりそばでも、小さな弟と一所でも、胸に思うのもはばかられる。……寝て一人の時さえ、夜着の袖をかぶらなければ、心に描くのが後暗うしろめたい。……
瓜の涙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おこそ頭巾をかぶった祖母としよりに手をひかれてあるいていた、そのころのわたしを、さびしくおもい起すのである。
浅草風土記 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
祖母としよりは、その日もおなじほどの炎天を、草鞋穿わらじばきで、松任まっとうという、三里隔った町まで、父が存生ぞんしょうの時に工賃の貸がある骨董屋こっとうやへ、勘定を取りに行ったのであった。
瓜の涙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その蔭に、遠いあかりのちらりとするのを背後うしろにして、お納戸色なんどいろの薄いきぬで、ひたと板戸に身を寄せて、今出て行った祖母としより背後影うしろかげを、じっと見送るさまたたずんだおんながある。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さて、祖母としよりの話では、古本屋は、あの錦絵にしきえを五十銭からを付け出して、しまいに七十五銭よりは出せぬと言う。きなかもその上はつかぬとことわる。ほしい物理書は八十銭。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……ついぞ愚痴ぐちなどを言った事のない祖母としよりだけれど、このごろの余りの事に、自分さえなかったら、木登りをしても学問の思いは届こうと、それを繰返していたのであるから。
瓜の涙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
見知越みしりごしじんならば、知らせてほしい、何処そこへ行って頼みたい、と祖母としよりが言うと、ちょいちょい見懸ける男だが、この土地のものではねえの。越後えちごく飛脚だによって、あしはやい。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
早手廻しに、もうその年のとりの市を連れて歩行あるいた。従って、旅費の残りどころか、国を出る時、祖母としよりが襟にくけ込んだ分までほぐす、羽織も着ものも、脱ぐわぐわで、暮には下宿を逐電ちくでんです。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「すぐ開き一つの内に、祖母としよりが居ますが、耳が遠い。」
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
祖母としよりに小豆を煮て貰って、三度、三度。」
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
祖母としよりの失言をあやまります。」
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)